神社奇譚 0-2 グレムリン
私はひょんなことから近くの神社の役員となった。
郊外の住宅街の小さな社でも正月などはひとが溢れる。
猫の額ほどといいながらも10台以上停められる駐車場は
すぐにいっぱいになり、いちばん混み合う時間では
駅まで人が並ぶこともあったらしい。
だが節分を過ぎ、神社の仕事も一服と云う時期に。
ひともまばらな・・いや、かえって寂しいほどの時季に。
事件は起こった。
そもそもの第一発見者は会社帰りに見回りに立ち寄った私で。
余りの事態にその夜のうちに氏子会の御歴々が社務所に集まった。
賽銭箱に 鋸の刃を当てて斬り込んだ跡がありありと残されていたのだ。
しかも複数・・数えれば4本ほど斜めに斬り込んでおり
いちばん深いものは30センチ以上も斬りこまれていた。
縦1m横2m高さ1m程の大きな賽銭箱。重量は50kgを超える。
頑丈な木と金属によって作られた箱に、
さらに、これ見よがしに何重にも掛けられた鍵の数々。
正直、賽銭泥棒というのは、別に今に始まった事ではない。
そのたびに、大きく重く鍵の数も増えていった。
「賽銭箱によ、鋸で斬りつけるとは、とんでもねえ野郎もいたもんだな。」
「管理人は気がつかなかったのかよ。」
「だっていつやったかわからないじゃないか。」
「しかしよ、不景気だからってよ、随分ひでえことしやがる。」
「おぅ、下村の社じゃ、賽銭箱ごと持っていかれちまったらしいぞ。」
「あ?あそこの社じゃ・・幾らも入ってねえだろ?」
「けどよ、30kgの箱を持っていかれたってんだからな。」
「をひをひ」
そこで更に、見回った役員連中がタバコの吸殻が
社の裏側に落ちていたのを発見する。
「をひをひ、神社、燃やされたらたまらないぜ」
「なんだかんだ云っても江戸時代の建物だからな」
以前、社の裏手に住み着いたホームレスを力づくで追い払った
苦い経験もあるらしいんだが、「警察官立ち寄り所」の看板の申請までは
できなかったらしい。
「近所のよ、中学生みたいなのがタバコ吸ってたって話だぞ。」
「あれら、群れなしてるだろ、注意したってよ、文句言いやがるだろ!」
「ほれ緑色のベスト着た防犯なんとかの爺さんがいるじゃないか。
あぁいうのを使ってさ、おっぱらえないものかね。」
「あいつら、PTAに変なおじいさんがいるって注意されてたらしいぜ。」
「・・たく、役にたたねえなぁ。」
神社の役員と云うもの意外に口が悪いのが多い。
兎にも角にも夜中に集まったはいいが
なにも策を見出せぬまま、次の日曜日に集合する事となった。
郊外の住宅街の小さな社でも正月などはひとが溢れる。
猫の額ほどといいながらも10台以上停められる駐車場は
すぐにいっぱいになり、いちばん混み合う時間では
駅まで人が並ぶこともあったらしい。
だが節分を過ぎ、神社の仕事も一服と云う時期に。
ひともまばらな・・いや、かえって寂しいほどの時季に。
事件は起こった。
そもそもの第一発見者は会社帰りに見回りに立ち寄った私で。
余りの事態にその夜のうちに氏子会の御歴々が社務所に集まった。
賽銭箱に 鋸の刃を当てて斬り込んだ跡がありありと残されていたのだ。
しかも複数・・数えれば4本ほど斜めに斬り込んでおり
いちばん深いものは30センチ以上も斬りこまれていた。
縦1m横2m高さ1m程の大きな賽銭箱。重量は50kgを超える。
頑丈な木と金属によって作られた箱に、
さらに、これ見よがしに何重にも掛けられた鍵の数々。
正直、賽銭泥棒というのは、別に今に始まった事ではない。
そのたびに、大きく重く鍵の数も増えていった。
「賽銭箱によ、鋸で斬りつけるとは、とんでもねえ野郎もいたもんだな。」
「管理人は気がつかなかったのかよ。」
「だっていつやったかわからないじゃないか。」
「しかしよ、不景気だからってよ、随分ひでえことしやがる。」
「おぅ、下村の社じゃ、賽銭箱ごと持っていかれちまったらしいぞ。」
「あ?あそこの社じゃ・・幾らも入ってねえだろ?」
「けどよ、30kgの箱を持っていかれたってんだからな。」
「をひをひ」
そこで更に、見回った役員連中がタバコの吸殻が
社の裏側に落ちていたのを発見する。
「をひをひ、神社、燃やされたらたまらないぜ」
「なんだかんだ云っても江戸時代の建物だからな」
以前、社の裏手に住み着いたホームレスを力づくで追い払った
苦い経験もあるらしいんだが、「警察官立ち寄り所」の看板の申請までは
できなかったらしい。
「近所のよ、中学生みたいなのがタバコ吸ってたって話だぞ。」
「あれら、群れなしてるだろ、注意したってよ、文句言いやがるだろ!」
「ほれ緑色のベスト着た防犯なんとかの爺さんがいるじゃないか。
あぁいうのを使ってさ、おっぱらえないものかね。」
「あいつら、PTAに変なおじいさんがいるって注意されてたらしいぜ。」
「・・たく、役にたたねえなぁ。」
神社の役員と云うもの意外に口が悪いのが多い。
兎にも角にも夜中に集まったはいいが
なにも策を見出せぬまま、次の日曜日に集合する事となった。
作品名:神社奇譚 0-2 グレムリン 作家名:平岩隆