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君と私と××と

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第一輪



最初は何なのか解らなかった。私の目の錯覚だと思っていた。
違う事に気が付いたのは、いつだっただろう。
あの花が見え始めたのは、いつからだろう?
燃える炎の中にある鮮やかな、見たことも無い花が咲くのを見たのは・・・――

ゆらり、

あぁ、ほら、またあそこでもう一つ咲いた。
もう見慣れてしまったと思っていたのだけれど、やはり花開くその瞬間は背筋が凍る。
最初の頃は見た瞬間に全身の毛穴が開く感覚に、溢れだす汗にと大変だったものだ。
鮮やかな色はしているが、決して綺麗なものではない。
出来れば目をつぶってしまいたいほどには。
花の色はさまざまで、赤、青、黄色・・・ひどい時は真っ黒なのもある。花の形もグロテスクだ。毒々しい色のその花は、たいてい人間で言う心臓の位置に生えている。
稀に、背中だったり腕だったりするが、まぁ大抵は心臓の位置だ。

ほら、あの男の人も、あの女の人も・・・あ、あの人は背中だ。珍しいものを見た。
今日も最悪な一日になりそうだ。いや、もしかしたらいい日かもしれない。

まぁ、そんなことはどうだっていいのだけれど。

そんなことを考えている私は、今人ごみにまぎれてふらふらと歩いている。
歩き方がふらふらなわけではない。町の中を当てもなく歩いているという意味だ。
服装はこの街で割と有名な私立高校の制服。
学校は、体調がすぐれないと言って早退してきた。体調が悪いというのは嘘だけど。
手の中で携帯とストラップを弄びながら、目線を下げて歩く。
そのせいなのか、前の人にぶつかってしまった。

「すいません」
「あ、いや」

視線を上げてその人を見た瞬間、足元で「ガシャン」と言う音がした。
あぁ、私が携帯を落としたのか。壊れてなければいいけれど。

頭の隅でそう考えながらも、私も、目の前の男の人もぽかんとした顔をしていた。
こんな表情をしたのは久しぶりかもしれない。

「君・・・」

やっと口を開いたのは、男の人だった。
それにハッとした私は、思わずUターンして、元来た道を走った。
何故そうしたのかは分からないけれど、心臓がばくばくいって、うるさかったのだけ覚えている。

気が付いたら、家の前に居た。


作品名:君と私と××と 作家名:渡鳥