月夜
ベッドの上に散る月の光は相変わらず冷たかったけれど、そのことにあまり意味は無かった。
交わりを解いてしまうのが惜しくて、果てたばかり熱い体を重ねたまま、お前の鼓動を感じていた。
「 」
小さく掠れた声で名前を呼ばれる。濡れた唇で、ねだられる。
「・・・もういっかい」
切なげな瞳。
「このまま、して」
懇願。
きっと、俺のために。
真っ白い肌は、月のせい。
真っ赤な痕は、俺のせい。
「あっ、ぁ・・・・・・っ」
お前を犯してるんだって、いつも思う。
俺が、お前を。
「は・・・ぁ、ん・・・っ、もっと・・・・・・ぁあっ」
過剰なリアクションは要らない。お互いにパフォーマンス性は求めてないから。
感じるなら喘げばいい。足りないならねだればいい。お前はちゃんと分かってる。
ただ素直に。正直に。
何度もしてきたセックスはみんな同じようで、だからこそ、数を重ねるほどに深く知れた。
お前の全部を、俺の全部で感じたいだけなんだ。お前はここに居るって。確認したいだけ。知りたいだけ。
快感を求めることなんて二の次でいいって、そこまで言ったら嘘になるけど。
快感以上に欲しいものがあることは、本当だから。
ねぇ、好きだよ。大好き。
ずっと、ずっとそうだから。
遠くに行ったりしないで。どこにも行かないで。
ここに居て。そばに居て。
どれだけ女々しい願いか、分かってる。
でも俺はきっと、この季節に慣れることはないから。
こんなに近くに居るお前のことが、おかしいくらい恋しくなるから。
だからお願い。
聞かせて。
「・・・す、き・・・・・・ー」
闇に溶ける前にくちづけて、閉じ込めて。
真っ白い月に照らされて、秋の夜は、ゆっくり更ける。