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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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新説御伽草子~桃ねーちゃん!

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終幕


 青い星へ向かう一隻の〈星の船〉。
 その内部――。
「誰だアタイのケツ触ったのは……サルてめぇだね!」
「オレじゃねーよ! だったとしてもこれじゃ不可抗力だろ!」
 前にも増してギュウギュウ詰めだった。
 なぜかSMグッツで拘束されている幼女がひとり。
「これでかぐやのこと人質に取ったつもり!」
 かぐやだった。
 桃はかろうじて動いた足の裏でかぐやの顔面を踏んづけた。
「うっさいんだよ、人質じゃなくてアタイのげ〜ぼ〜く。まだわかっちゃいないようだねぇ」
 桃は足の裏でかぐやの顔面をグリグリした。猿助の臭そうな足じゃなくって本当によかった。
 鈴鹿は猿助を後ろから抱きしめながら乗っていた。
「ダーリン、ジパングに帰ったらすぐに挙式をしましょうね」
「しねーよ!」
「そうですわね、その前に両親への挨拶が先ですわね」
「それもしねーよ!」
 相変わらずの二人だった。
 ポチを抱いていた雉丸が丸い窓の外を指差した。
「ほら、見えてきたよ」
「すっごぉ〜い、青い宝石みたぁ〜い」
 もうすぐ故郷に帰れる。
 かぐや以外はね!
 一同に感慨に耽っていると、スピーカーから通信が聞こえた。
《晴明だけと聞こえる……ったく何度呼びかけても出ないんだから……》
「聞こえてるよ」
 ちょっぴりドスの効いた声で桃が返した。
《えっ……聞こえるての!? え〜と、そのだな、ずっと通信が繋がらなくて……そのぉ》
「もう全部終わったよ、これからジパングに帰るところさ」
《ふぉふぉふぉっ、ワシの活躍があってこその偉業じゃな!》
 亀仙人が通信に割り込んできた――が。
《すっ込んでてよエロ仙人!》
 スピーカーの向こうからドンという撲殺音が聞こえ、何事もなかったように再び晴明の声が聞こえた。
《すまない、ちょっと邪魔が入った……まだ生きてたのかハゲ!》
 ドタバタ取っ組み合いでもするような音が聞こえてくる。
 手が離せないようすの誰かと誰かの代わりに女性の声が聞こえてきた。
《やっほー金ちゃん、元気してる〜?》
 呉葉だった。
《こっちはなんだか大変なことになってるのよ!》
《雉丸のお母さん僕に代わってください》
 少し息を切らした晴明が話しはじめた。
《実はジパングは大変なことになってるんだ。魔女っ娘大魔導士温羅が復活して海底鬼岩城を造ったり、酒呑童子と茨木童子が生きているという噂が各地か飛び込んでくるし、他にも大嶽丸という鬼が失恋の痛手で暴れ回ってるとか》
 さらにもう一つ晴明は付け加えた。
《これはわたくし事で恐縮なんだけど、ウチのママがジパング征服に乗り出しちゃったりして》
 嗚呼、あの大怪獣九尾の狐か。
 なんだかジパングが大変なことになっているのはわかった。
 話を聞き終えた桃は楽しそうに微笑んでいた。
「ジパング一の絶世の美女、この桃ねーちゃんの出番のようだね。てめぇら、今すぐ怪物どもを退治に行くよ!」
 こうして桃の漫遊記はまだまだ続くのだった。
 ここでかぐやがボソッと呟く。
「無事に着陸できたらいいけどね」
「…………」
 一同沈黙。
 猿助が叫ぶ。
「オレは若いねーちゃんとの思い出を忘れるなんてイヤだーっ!」
 こうして桃たち一行を乗せた〈星の船〉は流れ星となった。
 死ななきゃまた逢おうぜ!