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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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新説御伽草子~桃ねーちゃん!

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 刹那、桃の口から血の華が咲いた。
 白い石庭に飛び散った鮮血。
 猿助も雉丸も唖然として口から声すら出なかった。
 かぐやは両手でガッツポーズ。
「かぐやは今このとき悪魔から解放されました!」
 すぐに立ち直った雉丸が猿助に向かって叫ぶ。
「さっさと桃さんを運べ!」
 そう言って雉丸はポチを脇に抱えて、さらにかぐやも脇に抱えて走り出した。
「なんでかぐやまで!」
 かぐやは手足をばたつかせるが雉丸はまったく無視。
 猿助は自分より大きな桃を背負って雉丸の後を追った。その背中で桃は苦しそうに言葉を吐いた。
「あの野郎……まだアタイは戦え……」
 そのまま桃の声は小さく消えた。意識を失ってしまったようだ。
 まさかこんなことが起こるなんて……。
 桃も人間だ。しかし、猿助と雉丸には信じられなかった。絶対に負けないと信じていた。
 猿助は歯を食いしばりながら走り続けた。
 すぐ背後からは鈴鹿が追ってくる。
「逃がしませんわよ!」
 真横をかすめる大通連と小通連の刃。
 雉丸が前方に何かを見つけて叫ぶ。
「鬼の乗り物だ!」
 流線型のフォルムをした乗り物。座席はあるが、車輪などはない。タイヤのないオープンカーだ。
 かぐやとポチを抱えた雉丸が前の座席に飛び乗る。続いて乗った猿助は後部座席に桃を寝かせた。
 座席に流れる血の雫。
 傷は深い。一刻を争う事態だ。
 ずっと安らかに寝ていたポチが目を覚ました。
「ふわぁ〜、よく寝たぁ」
 そして、ポチの眼前をかすめた大通連。
「わっ!」
 一気に目が覚めた。
「なに、どうしたの!? うわっ、姐御さん大けがしてるよ!!」
 慌てるポチの座席を猿助が後ろから蹴っ飛ばした。
「さっさとこの乗り物動かせよ!」
「……えっ?」
 目を丸くするポチ。
 ポチが乗っていたのが運転席だったのだ。
 鈴鹿はすぐそこまで来ていた。
 焦りまくるポチ。
「ボ、ボク運転なんてできないよ!」
 弱音を吐くポチの後部座席を再び猿助が蹴っ飛ばした。
「気合いでやれ、姉貴が死んでもいいのかよっ!」
 でました気合い!
 ポチは破れかぶれでハンドルを握ってアクセルを踏んだ。
 ――何も起こらない。
「ダーリンを返して!」
 鈴鹿の投げた大通連がポチの首を刎ねんとする!
 雉丸がポチの後頭部を掴んだ。
「危ないポチ!」
 ゴツン!
 雉丸に無理矢理頭を押し込められたポチはおでこを強打した。
 その瞬間、モーターの駆動する音が響き、なんとエンジンがかかった。
 しかも、アクセル踏みっぱなしだったのでいきなりの急発進。
 レッツ激突!
 いきなり塀に大激突したが、そのまま壁を突き破って爆走。
 どうにか鈴鹿から逃げ切ったかと思ったが、なんと鈴鹿は大通連をスノーボードのように使って追って来るではないか!?
「ダーリンばかりか、妾の愛車?光輪車?まで奪うとは許しがたき所業!」
 宙を低く浮かびながら走る光輪車。
 紅い反り橋を飛ぶように越えた。そのとき、赤青黄色のナマモノを撥ねたような気がするけど、気にしな〜い!
 てゆーか、ポチはそれどころではなかった。
「わっ、ぎゃーっ、無理だよぉ!」
 叫びながらもどうにか運転できているのでオッケーさ!
 雉丸のリボルバーが連続して火を噴いた。
 小通連がすべての銃弾をはじき返す。あの妖刀がある限り、鈴鹿は鉄壁に守られているようなものだ。
 猿助は懐から何かを取り出して投げた!
「くらえ火遁の術!」
 目が眩む閃光が辺りを包んだ。
「しまった火遁じゃなくて、閃光だった!」
 うっかりさん♪
 しかし、その間違いが功を奏した。目を眩ませた鈴鹿がバランスを崩して大通連から落ちのだ。
 地面を激しく転がる鈴鹿を尻目に光輪車は全速力で走り続けた。