Hello Mr.Valentine.
そうだ、初めて貰ったチョコがここまで力作なのはすごいよな、と改めて思った。そしておもむろにジーンズのポケットから携帯を取り出し、カメラを起動する。
「千笑さん、・・・笑って?」
「え?」
「チョコレートケーキとチョコまみれの千笑さん、記念に下さい」
「だ、ダメですよ!こんなグチャグチャな格好で!」
「やだ、そのままの格好の千笑さんがいい」
だだをこねるように、少し甘えた声を出す。勿論、計算の内で。
「またそんな声だして・・・!卑怯です!」
「はいはい、オレは卑怯です。ほら、観念しな」
かなり苦い顔をしながら、千笑さんがのろのろとケーキの脇に座る。それでもまだ諦めきれないのか、視線を泳がせたり髪を弄ったりと落ち付かない。
「千笑さん」
まだ少し不機嫌そうな千笑さんがカメラをチラリと見たのを受けて、写真を撮る決まり文句の代わりに小さな声で言った。
「ダイ スキ です」
ボタンを押してピピッとシャッター音が鳴る頃には、満面の笑みの千笑さんがディスプレイに居た。
―Be My Valentine.
作品名:Hello Mr.Valentine. 作家名:映児