辺境
辺境の神官の朝は早い。彼の朝は、朝陽と共に光る聖木の朝露をすくい集めることから始まる。乾き、地に落ちる前の朝露を冷たい銀の匙で一つ一つすくって小瓶におさめ、神殿の水盆に垂らす。アデライーデ教において重要な役割を示す水盆に溜められたこの水は、聖水と呼ばれている。毎日少しずつ継ぎ足していき、この水に祈りを捧げることが神官職の朝のお勤めである。
辺境唯一の神官、ジョバンニはまだ外が暗い内から自然と目が覚め、体を起こした。眠気と視力の悪さから目を細め、闇を睨む。手さぐりで燭台とマッチを探し、灯りをともした。次は身なりを整えようと寝室から出ると、有るべきはずの物が有るべきはずの場所に無いことに気付いた。
「……やられた」
盗まれた。
辺境唯一の神官、ジョバンニはまだ外が暗い内から自然と目が覚め、体を起こした。眠気と視力の悪さから目を細め、闇を睨む。手さぐりで燭台とマッチを探し、灯りをともした。次は身なりを整えようと寝室から出ると、有るべきはずの物が有るべきはずの場所に無いことに気付いた。
「……やられた」
盗まれた。