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篠原 求婚2

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 別に、真実が重荷というわけではないが、自分の恋人には教えておいても問題はないだ

ろう。
「・・・あのな、シア・・・」
「なに? 」
「あれは、きみのところの種族の純血種で、地球の時間で換算すると、成人するのに五十

年くらいかかる。それで、あいつは、また誕生して二十数年なので、実際は身長一メータ

ーくらいの子供が実像だ。」
「はあ? 」
「事情があって、細胞を促進成長させたから、姿は、あんなだけど、きっちり子供だ。き

みだって、普段は、子ども扱いしているくせに、こんな時だけ一人前扱いするのかよ? 


 雪乃も雪乃だ・・・と、内心で付け足した。自分の恋人も雪乃も、普段は、てんで子供

扱いしているくせに、こんなことだけは、成人した男として扱っているのが、非常に妙だ


「え? だって・・・」
「いろいろと事情があってな、あいつ、知識だけは詰め込むだけ詰め込まれているんだよ

。だから、一般常識が、かなり怪しい。・・・どうせ、麟かジョンが入れ知恵でもしやが

ったんだろう。」
 そういえば、と、恋人は、麟が助力したと思い出した。確かに、あれがなければ、こう

はなっていないだろう。それと、篠原のは自称両親たちの助力だ。その辺りの事情を説明

したら、加藤は、肩を震わせた。
「・・・ああ、なるほどな・・・そりゃ、立派なプロポーズだ。あのバカにしちゃあ、最

高の誘い文句だ。」
 たかだか、十歳に満たない子供がするには、最高の求婚ということになるだろう。色恋

に疎いのではない。まだ、その感情が育つ前の子供だから、「傍にいてほしい」 という

言葉は、子供なりの最高の求婚には違いない。
「雪乃も知らないの? 」
「知らないさ。篠原の母親が死んだ後、しばらくだけ、父親が引き取っていた。そのブラ

ンクがあるんだ。雪乃も、きみらの種族の子供の成長速度までは理解してないだろうから

さ。」
「教えてあげたら? 」
「別にいいんじゃないのか? 雪乃も気は長いほうだから、あれが発情する年齢まで待っ

てられるだろう。」
 それが、まだ、随分と先の話になるだろうし、地球を離れてからのことになる。そこか

ら先は、加藤にもわかせない未来のことだ。
「ああ、だから、私は、義行が可愛くて仕方がないのかしらね? 」
「肌で感じてんだろ? 妹の愛なんかより、ずっと子供だからなあ。」
 くくくく・・・と、笑って、ようやく恋人を腕に収める。
「ねぇ、秀。あなたは、成人している? 」
「あんた、今更、それを俺に聞くかね? 」
「可愛いとは、肌で感じないけれどね。」
「はいはい、じゃあ、実証させてください。」
 華奢な肩を抱きしめて、その匂いを胸一杯に吸い込んだ。たぶん、お互い、この相手と

最後まで一緒に行こうと決めた。この星ではない、どこかで、死ぬまで離れることはない

。なにせ、自分たちは、これから地球の時間で数百年は、このままの姿だ。さすがに住ん

でいるのは難しい。もちろん、篠原と雪乃も同様だ。だから、この星を離れることは、以

前から決まっていた。篠原も、身体さえ治療できれば、加藤より長命ではあるからだ。
「あのバカも、離れることはないだろうな。」
「・・そうね・・・」
 時間の流れが近いもの同士が、寄り添えることがうれしい。それについては、加藤も、

「よかったな。」 と、伝えてやりたいと思う。
 たぶん、これから、少しの時間で、お互い、離れてしまうだろうけど、また、いつか会

えるかもしれない貴重な相手になるだろう。
「結婚してみるか? 地球の作法で。」
「それこそ、今更だと思うわよ、秀。」
「あんたに似合いの宝石を贈ってさ。あんたが、俺のもんだと宣言するのは楽しそうだ。


「じゃあ、私も贈りたいわ。」
「俺、宝石なんかできないぞ。ああ、それなら、結婚指輪なるものにしよう。あれはシン

プルだ。でも、シアには、白い宝石を贈りたい。」
 真珠といって、地球の海で、ゆっくりと作り上げられる宝石なんだ、と、加藤は楽しそ

うに説明した。すると、恋人も、「地球での、いい思い出になるわね?」 と、頷いた。

作品名:篠原 求婚2 作家名:篠義