笑門来福 短編集
私のネクタイには、電波送受信機といった機器類を搭載している。
それが、地球侵略者の通信電波を捉えた。
なんと! すぐ近くではないか!
私の食器のそばに立っているのを見つけそっと立ち上がり、背後からパンチを入れた。そいつはひっくり返った。
翻訳機のスウィッチを入れ、話しかけた。
「君が、宇宙から地球を狙ってやってきた侵略者だな」
「私は地球征服のためにやってきた仲間を捜し出すために来たのです。彼らが到着してまもなく、通信が途絶えてしまったからです。
仲間はすぐに見つけました。
どうやら我々の高度な科学機器に依存しすぎたため、祖先の知能は低下し、言語まで忘れ去っていました。ただただ、繁殖能力を高めただけで・・おそろしく、増え続けています」
苦しげに話し続ける。
「我々の地球征服は成功したようですな、柴犬の旦那」
「きゃああぁぁぁぁ」
真実は帰宅するや、恐怖の叫びをあげた。
新聞紙を丸め、叩きつけた。
手足をばたつかせていたそいつは、ぺしゃんこになった。
真実は新聞紙で両側から挟みこみ、丸めてゴミ箱に捨ててしまった。
その一連の残酷極まる出来事に、私は茫然と見つめるだけであった。
3億年前にやってきて地球を征服したというゴキブリ人と、10万年前に地球に広がり始めた現生人。
はたして、どちらが地球侵略者だったのだろうか。
「イチコロちゃん♪ 首輪を買(こ)うてきたから取り変えようね。素敵でしょう」
と、私のネクタイをはずしゴミ箱に投げ入れ、新しいネクタイを巻きつけた。
――ま、いいか。宇宙を飛び回っているより、ここは極楽だわ。
私は再び、まどろみ始めた。
2011.03.08