小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

ダークネス-紅-

INDEX|49ページ/51ページ|

次のページ前のページ
 

 と、本物の雅の兄――タケルは言った。
 雅の人格の中にいる?お兄ちゃん?。?早苗?の人格には、元となった母――早苗がいた。そう考えれば、本物の兄がいても可笑しくはない。
 立ち尽くす三人に注視されながら、タケルは口から唾と一緒になにかを吐き出した。それは早苗がしていた指輪だった。
「クソ婆の肉は筋っぽくて不味かった。こんな躰にされなきゃ、あんな不味い肉喰わなくても済んだのになあ、雅?」
 言葉を投げかけられた雅は震えた。
「わたし知らない……わたしなにも知らない……」
 頭を抱えてしゃがみ込んだ雅にじわりじわりと近づくタケル。
「おいお前ら知ってるか?」
 とタケルは紅葉と愁斗に顔を向けて話を続ける。
「こいつがオレを殺してこんな姿にしたんだ。包帯グルグル巻きにして、呪符でオレが腐るのを食い止めた。なんでそんなマネをしたか知りたかねえか?」
 紅葉と愁斗はなにも答えない。ただじっとタケルを注視し、すぐにでも攻撃にできる体制だった。
 なにも答えないことをイエスと解釈して、タケルは雅から一メートルの距離で立ち止まり、見えない遠くを見上げながら記憶を蘇らせた。
「そうだな、まずはオレと雅の関係から話すか」
 饒舌にタケルは長い話を語りはじめた。
「オレは雅のことを世界で一番愛してる。だから何度も犯してやったんだ。こいつ最初は嫌がってたんだけどな、だんだんと女らしくなってオレに抱かれることを喜ぶようになったんだ。
 雅って名前はこいつの本名の雅夫から字を取ってオレがつけてやったんだぜ。
 そんな感じでオレらは兄弟仲良くヤってたんだけどよ、敵がいたんだ。クソ婆の母さんだよ。
 オレは連れ子だったし、雅は苛めやすい体質でクソ婆に罵声を浴びせられるわ、暴力は振るわれるわ。で、オレと雅で協力して刺してやったんだよ。それで二人で逃げた。
 それからだよ、雅の中に母さんの人格が生まれたのは。オレたちは母さんが死んだと思ってて、雅はその現実を受け入れたくないから母さんを生きてることにしたんだ。
 それからいろいろあってオレたちは帝都に来た。で、しばらくしてオレは雅に殺された。理由は嫉妬だよ、嫉妬。帝都って綺麗な女が多いだろ、だからオレの心がそいつらに捕られる前に雅はオレを殺した。
 殺したあとで雅は後悔したんだ。いつも雅を守ってやってたのはオレだし、オレなしじゃ雅は生きていけない。だからオレのことも生きてることにして、雅の人格の中にオレが生まれたってわけさ。
 でもよ、雅のつくったオレや母さんは雅の幻想の産物だ。本物とはぜんぜん違うし、雅の欲望を反映させてたんだ。
 オレの人格が女を犯すのは、雅が自分がオレにそうされたいって欲望からだったし、母さんの人格が綺麗な女を襲って顔を剥いだりしてたのは、自分が本当は男だってコンプレックスからだからな。
 クククッ……オレは雅のことだったらなんでも知ってるんだぜ。ケツにほくろがあるってこともな」
 と、武は長々と語って、最後に付け加えた。
「でもよ、雅がオレを殺したの正解だぜ。オレは紅葉に惚れちまったからな」
 その言葉は雅の耳に届いた。
「イヤァァァァァァァッ!」
 鼓膜が破れんばかりに叫んだ雅は走り出し、地面に落ちていた血の付いたナイフを拾い上げた。
 紅葉が叫ぶ。
「やめて草薙さん!」
 紅葉の制止も聞かず、雅はナイフの切っ先を自らの喉に突き立てた。
 紅い鮮血の泡が口から吐き出され、そして雅は力なく地面に倒れたのだった。
 吹き荒ぶ風が狂気を孕んだ。