サイコシリアル ［３］
戯言に涙【２】━━カニバリズムの場合の続き
「あははははは、弄ぶなんてよく言えたものね。逆に弄んで、いたぶって、食べてあげたいくらい」
「霞ヶ窪、お前は本当に救いようのない女だな。救いたくもねーけど」
「私は救われる理由なんてないわ。だって、救われる意味もないもの。良い意味でね」
「戯れ言も大概にしろよ、霞ヶ窪。救われる理由なんて誰一人としてないんだよ。問題は救いたいか救いたくないかだ」
「戯れ言をほざいているのは、あなたでしょう、涙雫君。死を目の前にして良く言えたものね」
かかったのか。
僕の強がり、ハッタリに霞ヶ窪はうまく乗ってくれたのだろうか。
少なからず、霞ヶ窪の興味が僕へと移行しているのは分かる。
その証拠に先程よりも少し、ほんの少しだけ、微々たるものだけど、霞ヶ窪の体は僕の方へ向いていた。
戯贈はと言うと、未だに虚ろな目をしていた。
戯贈には行動力が欠落している。そこをつかれたのだろうか。
いや、待て。決めつけるのは、まだ早い。
戯贈の行動力が欠落している、ということを知っているの殺し屋の面々、そして、猿渡警部くらいだろう。
霞ヶ窪はそれを知らないはずだ。ただ純粋に戯贈を食いたかっただけなのだろうか。万人を凌駕する程の美貌を持つ訳ではない、戯贈を食いたかったのだろうか。
分からない。
「霞ヶ窪、お前は美人を食べるんだよな。何故、戯贈を狙う」
僕は、素直に霞ヶ窪に問いかけてみた。
僕の持論からすると、白熱してきた悪役という者ほど、現状や野望等を事細かに絶命してくれる者はない。
物語の悪役程喋りたがり屋はいない。
多分、この持論は今回も例外ではない。
「戯贈さんは、美しいじゃない。見た目云々の問題ではないわ。心に闇を抱えた女性ほど美しいものはいないもの」
ほら、やっぱりそうだ。最初は答えずとも、時間の経過と共に話すのが悪役ってもんだ。
個人から見れば、大抵の人間は悪だけれども。
要するに人は皆、喋りたがり屋だ。
心に病的な何かを抱えているのであれば尚更。
「心に闇を？」
僕は促した。多分、殺し屋ということを知っているののだろうか。まぁ、今はそんなことはどうでもいい。
この場合は、慎重に丁寧に冷静に、あくまでも時間稼ぎをするために。
作品名：サイコシリアル ［３］ 作家名：たし