D.o.A. ep.8~16
「ヴァリメタルは、魔物除けじゃ、なかったのか…?」
「それは、青い色をしているときの力ですよ。今は反対に赤い。効果も全く逆になっているのでしょう」
「どうして、青が赤に…!」
24班に課された任務は、洞窟へ入って異状を見つけてくることであって、原因を追究せよとまでは言われていない。
このまま立ち去ってしまいたいという拒否感と、放っておけないと思いとどまる気持ちがせめぎ合う。
「この洞窟のヴァリメタルは、もとの青い色に戻るだろうか」
「さあ。私にはなんとも」
「もし戻らないなら、すぐに洞窟を塞いでしまうべきだ…このままでは、この一帯は魔物で埋め尽くされる」
「それもある種の解決と言えなくもありませんね」
トリキアスはこの更に奥に用があるようで、ティルの意見をまともに聞かない。
こんな異状の原因が、この更に奥に、待っているのか。
「…俺、も」
行けと命ずる心と、退けと命ずる心の葛藤が、終わる。
「…俺も、この先に行きたい。いいかな」
「洞窟へ入った時点で、私とキミたちの協力関係は終わっています。お訊ねにならずとも、ご自由にどうぞ」
もう我々は赤の他人ですよといわんばかりに、壁から離れたトリキアスはさっさと行ってしまう。
「……」
出来る限り早く片付けてしまいたいティルの気持ちはよく理解できる。
近くに彼の故郷であるヴァリムが存在するからだろう。
しかし、子供が探検するくらいなら、そう広い洞窟でもなさそうであるし、奥まで行って戻ってきたらとりかえしのつかない数に増えていた、ということはありえまい。
「トリキアスが、なんか妙なことしないように見張るってのも、仕事のうちに入るんじゃないかな。
あいつ強いけど、いい奴とは限らないし」
なるべくこそこそと耳打ちする。これにはティルの心もぐらついたようだった。
「目的がはっきりしない以上、この区域を担う者として放っては置けない、か」
「そうそう」
と、にわかにむこうが騒がしくなる。斬撃音と、魔物の咆哮。トリキアスが分娩場の除去を開始したらしい。
明かりはぼんやりと赤く光るヴァリメタルくらいのものだというのに、呆れるほど正確に、容赦なく、相手を葬っている。
斬撃音が聞こえるのは、刃で斬りつけているからに違いないのだが、そう言えば、とふと気付く。
今更だが――――彼は、丸腰ではなかっただろうか?
作品名:D.o.A. ep.8~16 作家名:har