D.o.A. ep.8~16
「…は?」
「ゴ、ゴメン。聞き間違いか。今、あんたがどうにかできるって聞こえたんだけど」
「心配ありません。キミたちの耳は正常です」
彼はあくまで慇懃に提案する。
「キミたちは道案内をし、私が魔物をどうにかする。手を組んでいただけませんか。互いにメリットのある、悪い話ではないでしょう」
「………」
ティルとライルは顔を見合わせる。確かにそれは都合の良い話だ。
この男が本当に魔物をどうにかしてくれたら、こちらも洞窟へ入ることができ、「敵が多すぎて逃げるしかなかった」という、情けない報告をせずに済む。
けれどもそれで本当にいいのだろうか。結局、この男の素性すら満足に知りえぬままなのだ。
しかし、ここで迷っていても埒が明くまい。
それに、自分たちのような一兵卒に下される今回の任務に、重要な国家機密が絡んでいるとは考えにくい。
「…わかった。協力する。俺はライル、そっちはティル」
「それは良かった。短い間ですが、どうぞよろしく」
でも、とライルの声が、背中を向けたトリキアスを止める。
「一つだけ。…あんた、いったい何者?」
彼は振り返る。笑みを浮かべた薄い唇に、軽く立てた人差し指を当て。
「殺し屋です」
作品名:D.o.A. ep.8~16 作家名:har