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桜田みりや
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novelistID. 13559
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宇宙からの警告

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頭を押さえながら、降ってきたボールを拾い上げた。ボールは野球ボールではなく、真っ黒な鉄球のような玉だった。だが鉄のように重くはない。それこそ野球ボールくらいの重さしかなかった。
「なんだろう…これ…?」
「由生クン、それ見せて!」
なかばひったくるようにボールを持っていった。空に透かすようにボールを掲げて、何か勝手に納得していた。
「コレを探してた!」
「マジそんな丸いのが鍵? スゲーな!」
貸渡が珍しい車を見るようなキラキラした目でボールを見ている。
「お礼をしたいの。なにがいい?」
唐突だったが紗希はそんなことを切り出した。
「別にいいよ。なあ、貸渡?」
「俺はほっぺでいいからキスとかほしいけど」
「それは要求するものじゃない」
ふたりの気持ちは同じだった。何かがほしくて手伝ったわけではない。だからその紗希の気持ちだけで充分だ。
「僕たちはなにもいらないよ」
「それは義理人情侘び寂ですね!」
「いや…違う…」
「これがなければホームに帰れなかった。気の済むままにお礼をします」
そう言って紗希は鞄からペンとノートを取り出して何か書き始めた。しばらくするとノートを破ってふたりに一枚づつ渡してくれた。由生のノートにはかわいい字で『時は金なり』と書かれていた。
「これ何?」
「時は悠久です。ですが人目人科の人類は時に限りがあります。それは寿命という言葉で識別されているものですがその寿命という限られた時間の中でいかに生きるのかが大切です。また金は持ちすぎると身を滅ぼすものですがなくてはこの文明社会での生活の営みはできません。金は時とはなりえませんが時は金ほどに」
「もういい」
言葉通りの意味の手紙らしい。貸渡には『二兎追うものは一兎も得ず』と書かれていた。
「アリガトウございました。私はホームに戻リマス。ワタシタチにできることはメッセージを送ること、シラセルことダケデス。コレからも送りツヅケルのでドウゾ…耳を目を…傾ケテ下サイ」
「紗希?」
「どうした!?」
紗希の言葉がおかしい。抑揚も発音もイントネーションもめちゃくちゃだ。
「サヨウナラ、地球の人。気づいてクレテありがとう」
一瞬にして強い光が紗希を包んだ。あまりにつよい光だったので由生たちは何も見えなかった。いや、見ようとも思えなかった。
光が消えた頃には紗希はいなかった。
「どう…いう……こと?」
「由生…実はな、あの紗希ちゃんは紗希ちゃんじゃなくてな。てか本物の紗希ちゃんなら俺が『紗希ちゃん』なんてなれなれしく話せないわけで」
「筒路じゃない?」
「宇宙人なんだ…」
「嘘だろ」
「昼間なのに空に星があると思ったらあの子が…」
「お前もそれ気づいたの?」
「それって?」
「星だよ」
ふたりは顔を見合わせた。ふたりが星に気づいたから、あの子が来たとしたら…
「“メッセージ”」
「だな」
由生は息を吐いた。それは白い雲のようになって空に昇る。
紺碧色の空に妙に星が耀いていた。それはきっと“ありがとう”のメッセージなのかもしれない。



作品名:宇宙からの警告 作家名:桜田みりや