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狂気!××××

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 瀬戸内海に面するこの街の冬は比較的暖かい。しかし雪の降らない冬の景色というのは、どこか味気なく、どんよりと覆う灰色の空と同じ色のマフラーに顔を埋め、鈍色の街から目を逸らし、暗闇の中に強烈な光を発する四角い大きな箱の中に吸い込まれた。
 そして齢18の年若い僕は午前6時10分、透明なドアを一枚挟み、君と運命的な出会いを果たした。僕の片手にすっぽりと収まってしまう小さな細身の体。控えめながらもどこか僕を惹きつけてならない可愛らしいかんばせ。君から発せられる甘く、芳しい匂い。くちづけ、少し吸い上げると、舌に絡みつくまろやかで、乳臭い君の味。
 その日から僕は君に夢中になった。高校を卒業し、大学生となり、深夜のアルバイトもするようになった僕は少しずつ経済力をつけていった。君のため、いや、結局は僕が君を貪り、愛したいがためなのだろう。僕は君に多額の金を貢ぎこんだ。僕の金の大部分が君のお父さんに流れていることは最初から僕は気づいていた。それでも君を愛すことをやめられなかったんだ!

 若い僕の体は日に日に君に溺れていった。僕の男の欲は留まることを知らずに、小さな君の体では満足できなくなっていた。
 そんなある日、インターネットの大手通販サイトで君を見つけた。細く愛らしかった体は成長し、肉付きが良く、豊満な体に生まれ変わっていた。そこにも君のお父さんの陰謀を感ぜずにはいられなかったけれど、愛する君のため、ひいては僕のために、僕は1L×6パック×四箱分君を注文した。
 家に運び込まれてきた大量の君を見て、姉は呆れ果ててこう言った。

「お前の水分の半分以上が紅茶豆乳でできている」

 僕は大きく頷いた。ミネラルウォーターを飲めない僕はその当時紅茶豆乳で一日の水分を補っていた。将来的にこの時のツケが回って、メタボっても、それはそれで本望だ。 

 今でも彼女と愛し合っているのかと訊かれれば、残念ながら僕はNoと答えなければならない。
 若い僕は色んな女性と付き合ってみたかった。
 まあ、ぶっちゃけると、毎日1Lも飲んでたら飽きないわけがない。
 
 相変わらずこの街の冬はただ乾燥して、寒いだけで、どこか味気ない。
 それでも少しだけ変化はある。
 当時と同じようにあの四角い箱の中に入れば、あの頃よりも色とりどりに化粧を施した彼女が僕を見下ろして微笑みかけてくる。
 僕は彼女たちを閉じ込める透明な扉を開けて、彼女達に手を伸ばす。白くて茶色い君の前を通り過ぎて、僕は黄色い娘に触れる。 この冬は君が僕の体に食物繊維と大豆イソフラボンを注いでくれ。
 


 こんにちは、バナナ。
作品名:狂気!×××× 作家名:高須きの