小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

D.o.A. ep.1~7

INDEX|8ページ/33ページ|

次のページ前のページ
 



「おうい!屋根の修理終わったぞー」
「悪いな、慣れん仕事させちまって」

梯子を伝って屋根から下りてくる頃には、太陽が西に傾きかけていた。

「大工だったら自分の家の屋根の修理くらい、自分でやれよな」
「仕事があったんだよ、どうせお前暇だったんだろ?いいじゃないか」
「ったく」

梯子から軽く降り立ったライルは不満を漏らしつつ、工具を男に手渡した。
疲れきった溜息を吐いて、背伸びをする。
少し赤みの差してきた空に、鴉が群れをなし飛び去っていくのが見えた。

「この時期ほら、台風だとか大雨だとかが多いだろう。忙しいんだ」
「で、自分ちは疎かになってるわけか」
「そう恨みがましい顔するなよ、悪かったよ。礼にメシ食ってけ」

それを聞いてライルはぱっと顔を輝かせるが、すぐに何かを思い出したように残念そうに笑う。
確か、リノンがビーフシチューを持ってきてくれると、それを思い出したからだった。

「いや、嬉しいけど、リノンがさ…」
「そうか…まあご無事で、と祈っとくな」
哀れむような表情で頭をかき回され、ライルの目が諦念に遠くなった。
「縁起悪いコト言うなよ…。…もしかすると…美味しい、かも…知れないだろ…」
頬を引き攣らせて、期待できない希望を口にする。
「ハハ、悪い悪い、じゃあ気をつけて帰れよ」
「ああ!じゃあ」


家に帰ってしばらくすれば、リノンが渾身の自信作と称してビーフシチューを持ってくるはずだ。
そして自信のあるものほど、味見をしているとは思えない出来で、机にて鎮座ましましている。
自炊できるからと、さんざん遠慮した末に食べる羽目になった手料理。
しばらくして、えも知れぬ悪寒と、凄まじい腹痛に襲われ、ちょっと花畑が見えかけた。
一体どんな調理法をふるっているのやら、欠点がわかれば上達するだろうと、アドバイスを与えようとすれば、「企業ヒミツ!」と追い返されるのである。
気持ちは嬉しい。疲れたライルをねぎらうべく、腕によりをかけて――その腕が全力で間違った方向へ向かってはいるが――作ってくれるのだ。
空を見上げると、一番星が輝いている。
なんだか慰めてくれているような気がして、はあっと溜息をついた。




作品名:D.o.A. ep.1~7 作家名:har