小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

D.o.A. ep.1~7

INDEX|6ページ/33ページ|

次のページ前のページ
 



猪に似た魔物が、今にも襲い掛からんとして黒の双眸に老女と、孫の少女を狙い定めている。
鼻息荒く嘶いたその魔物はその二人目掛けて突進してきた。
もうダメだと身を竦ませる老女。彼女の足はここまで逃げてきたので精一杯で、先程転んで足を挫いていた。


ギュッと目を閉じた。が、覚悟していた痛みと衝撃は来ない。
代わりに、前方でガン、と殴打の音。

すると、腕の中の少女が立ち上がって、魔物がやってくるであろう方向へ走り出した。
驚き、老婆は顔を上げる。

青い襟巻きをなびかせて立っている人物は、慣れ親しんだ少年で、安堵の溜息がこぼれた。
彼の足元には、気を失って横転している魔物の姿があった。

「ライにぃ、お帰りなさいっ!」
「ああ、ただいま。イリア」

駆け寄ってきた少女は、嬉しそうな声を上げて、”ライにぃ”抱きついた。
彼は何の苦もなく受け止め、少女の脇に手を差し込んで抱き上げると、くるりと回る。

「ん、どこも怪我ないな!よしよし、元気そうでなによりだ」
「助けてくれてありがと、ライにぃ!」

きゃっきゃ、と声を上げながら、イリアは頬を染めて腕を広げている。
五回転ほど回ってやったあと、彼女を地に降ろし、少年はへたり込んでいる老女の顔を覗きこんだ。

「ライ、ひさしぶりねえ…確か一週間ぶりじゃないかい? …それにしてもほんとうに、助かったわ」
「うん。ばあちゃんも無事でよかった」
「あ、でもね、ばぁばは足が痛いの!転んで紫なの!」

言われて、老婆は痛みを思い出す。
どうやら恐怖が痛みに勝ってしまっていたようで、紫色の足がじわじわ疼きだした。

「うわあ。歩くの無理そうだな。負ぶさりな、リノンに治してもらおう」
「悪いね」
「いつも世話になってるんだ。悪いなんてとんでもない。
でも女子供二人であんまり外うろうろしちゃだめだ。俺がいなかったら誰か男を頼ってくれな」
「イリアは子供じゃないよ。おつかいちゃんと手伝えたんだからね」
「ああ。そうだったんだ。イリア、えらいえらい」

頬をぷくりと膨らませる少女の小さな頭を撫で、老女に背を向けて屈みこむ。
確かな重みを感じると、ライルは少女の歩幅に合わせて、ゆっくり村へと歩きはじめた。



*******



作品名:D.o.A. ep.1~7 作家名:har