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D.o.A. ep.1~7

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ラゾーの大量虐殺を契機に、巡回班の構成員が三人から、五人に増員され、実質戦闘部隊となったのは、先で述べたとおりである。
ロノア王国軍にて戦闘が可能な者、もしくは邪魔にならない程度まで達した者は、だいたい全員が部隊に組み込まれており、
日々凶暴化しつつある魔物や、ならず者に対し気を張り巡らせていた。
なぜ五人なのか。理由は明快である。上記の人員が五で割り切れるためだ。

「あなたにもそろそろ、ちゃんと働いてもらうわよ!」
「まったくだソーティック!」

ライルとリノンが軍部へ行くと、グイッと顔を近付けて、誰かに迫っている、見知った人物が二人いた。
一人は、かの書類地獄でずっとお傍について時折邪魔してくださった、ヘクト氏。
もう一人は―――ユーラム=オルドリーズ少佐は、赤いルージュの塗られた唇をすぼめている。
もうすぐ根負けしそうな被害者に、僅かでも同情を覚えずにはいられなかった。周囲の者も同じく、遠巻きに様子を窺っている。
「ぐ、軍にも変わった男がいるのね」
「でもいい人だよ」
そう、ユーラム少佐とは彼女ではない、彼である。
オネエ言葉で話し、女物の化粧を愛用する男。
傍から見れば激しく奇人だが、心が女と自負するだけあって、女性軍人にはやたら厚い信頼を得ていた。
面倒見は良く、ポジティブなムードメイカーであり、そして、時には誰をも圧倒するという、妙な迫力を醸し出す。

「俺は軍とはほどほどの距離を置くつもりだと入軍前から…」
「ちょっと見ないイイ男だからって、そういつまでもワガママが通ると思ってたら、大・マ・チ・ガ・イ・よ」

迫られている方を見ると、ハッと息を呑んで、歩み寄っていった。
「ひさしぶり、ユーラム少佐、ヘクト」
「ああ、レオグリットか。久しいな」
「…あら、ライルちゃんご無沙汰ね。大怪我して入院してたんですって?」
「もう大丈夫だし、気をまわさなくてもいいよ。何でもできるから」
すると、感極まったように唇を震わせて、ひしっと抱きつかれた。香水が強く香る。ヘクトとリノンはひいた。
「ああーもう、大好きだわ。いい子ねライルちゃんは。ねえ、あなたからも何か言ってやって頂戴。頑固ちゃんでホントに困ってるのよ」

そして、その、頑固ちゃんであるという人物を改めて見る。
やはり、昨日の夕方見た青年だ。
昨日はまるっきり初対面ですと言わんばかりの顔をしていたが、さすがに昨日会ったことは覚えているらしく、バツの悪そうに眉を顰めていた。

「この子ったら、巡回なんかしたくないって言って聞かないの。ライルちゃんの爪の垢煎じて飲ませてやりたいわーあ」
「俺にそんな暇はない」
「しかし軍は辞めない、と。…そんな理屈が通用するか!」
「……俺がいなくてもさして問題はないはずだ」
「社会ナメんじゃねーわよ。いいことティルちゃん、これは命令なの。そんでもって、バランスもバッチリ考え抜いて編成されてるから、あなたが抜けると問題あるの。
あなたバカじゃないんだからわかるでしょ?」
「………」
「これ以上手間取らせたら、…そーね。チューしちゃう」
「…わかった、わかったから顔を近づけるな」
さっと青ざめ、青年はついに了承する。ライルとリノンは苦笑いを浮かべて見守っていた。
「最初からそうやって素直になっていればい・い・の。ああ、無駄な時間とったわ」
「さ、さすがです、オルドリーズ少佐」

一悶着が終わったようなので、演習場にでも行くか、と背を向けたとき。
「あら、あなたを待っていたのよ、ライルちゃん。勝手にどっか行ってもらっちゃ困るわ。…そこの彼女もね」
「…え?」
「わ、私も?」
「えー、諸君らには平時である現在、治安維持を目的とした軍事行動をとってもらうにあたり、
各自その自覚と誇りをもって責務を全うするべく…。 あー、まだるっこしいわね、もっとわかりやすくいきましょ」

堅苦しい長広舌は、ユーラムの気分でうち切られ、かわりに懐をさぐって、地図を取り出した。
トータスのみが描かれたそれを広げたテーブルを六人で囲む。
「あなたたち第二十四班の担当地区はこの赤く囲んである部分。駐屯地があるから、活動拠点はそこね」
囲まれている中には町が一つ、洞窟が一つ。思っていたより小さな範囲だった。
「結構狭いんですね」
「仕事は、担当地区内の巡回。発生したトラブルの解決。報告書の作成。まあいろいろあるけど大別してこの三つかしら。
基本的に、朝七時集合、巡回、夕方に報告書を作成。できた書類は、期日までにアタシに提出するように。
あとヒマなときは鍛錬でもしてなさい」
「トラブルってどれくらいの」
「とにかく武力が必要なレベルよ。
…んじゃ、まずは自己紹介ね。アタシはご存知、ユーラム=オルドリーズ。その駐屯地の担当だからよろしくねん」

「俺はヘクト=レフィリー。軍曹だ。24班の班長をつとめる。よろしく頼む」
太い眉をきりりとさせ、はきはきと名乗りを上げるヘクト。確かに、この中でまとめ役といえば、いかにも彼がふさわしい。
「ロロナ=イアルバーク上等兵です」
ユーラムの隣にいた、黒髪黒目の女性、というよりは少女が細い声で手を上げる。彼の隣なのもあいまって、影が薄かったので、この時までライルは気付かずにいた。
「リノン=ミラファードです。治癒術士です」
「ライル=レオグリット二等兵、得意なのは剣」

五人の自己紹介が終わり、最後に、青年がしぶしぶ口を開いた。

「…ティルバルト=ソーティック。弓兵」
作品名:D.o.A. ep.1~7 作家名:har