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D.o.A. ep.1~7

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ああ、うん、まあ。

結局、青年の真剣さにそぐわぬ、煮え切らない返事をしてしまった。
そうか、と青年は抑揚なくぽつりと呟くと、去って行った。本当にそれだけを訊きに来たらしい。

「誰なのか思い出せた?」
王都の安宿の一室にて、リノンはそんなことを尋ねながら、ベッドの上で寝そべって足を揺らしていた。

道中、なんとリノンも入軍を希望して、受け入れられたことを聞いたときの驚きは半端ではなかった。
が、まだ、宿舎の手続きが済んでいないらしい。
宿舎への手続きは入院中に決まっていたライルだったが、まさか彼女を、自分に割り当てられた、他の男も生活している部屋へ寝泊りさせるわけにもいかず、今日のところはホテルへ泊まることに決めさせたが、出費を可能な限り惜しんだ果てに、こんな宿に一人で泊まるのはいやだ、と巻き込まれてしまった。
けれど、なにせ、安宿に相応しく主人も、男女二人が並んでいると見るや、下世話な気配りをする男であったので、ベッドは当然一つしかない。
異性としての認識は薄いものの、一緒の寝床で寝たいかと問われれば、否である。
懐を痛めたのはリノンなので、必然的に彼女がベッドへ落ち着いたのだった。

「んー?」
一人がやっと入れる狭いシャワー室から、ライルがタオルを頭に被って出てきた。
「夕方に会った男」
「あー」
ガシガシ、と水気を拭きながら、間延びした声を出す。
「確か、初出勤の日にソードと城下歩いてて会った奴、だと」
「で、何者なのよ」
「弓兵のエースだってさ」
「ああ、弓矢背負ってたもんねえ」

鋭利な刃を髣髴とさせる眼を思い出す。
あの縋るような必死さがかけてられているのは、おおよそ仕事に対してとは思えなかった。
ということは、あの青年はかの指名手配書に描かれた男の関係者なのではないだろうか。
身内だったりしたら、と思い至る。身内なら、あの男の情報を知っていたとしても、隠すはずだ。
もし庇い立てするようなら許せない。同罪だ。ライルは無意識に奥歯を噛み締めた。

「明日から、がんばってね」
「なに?」
「仕事。私もがんばる」
「…ああ」
「もう、寝ましょう」
リノンがあくびをして、ベッドへもぐりこむ。ライルは無論、床である。
灯りを消すと、真っ暗になった。
「おやすみ」

「ねえ、ライ」
「なに?」
「………」
「まだ?」


「…なんでもない。おやすみなさい」








作品名:D.o.A. ep.1~7 作家名:har