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D.o.A. ep.1~7

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たったの一週間と五日。
過去にそれ以上離れていたことも一度や二度ではないのに、ライルは村を、かつてないほど懐かしく感じていた。
ジーン夫妻は、これまでに王都への引越しを考えていて、これを機に決断したらしい。もう戻らないと言っていた。
ライルも、これからは軍の宿舎に住むことになる。
リノンはどうするのだろう、教会を手放すのは嫌だろうが、こんな忌まわしい爪痕の残った場所に住み続けるのもどうかと思う。

彼はなんのあてもなく、村をぶらぶらとした。注意して見れば、そこかしこに惨劇の跡がある。
―――この村は、滅んだのだ。
もはや人っ子一人いないここに、そんな実感がわいて、胸が苦しくなる。
ラゾーに関する記憶が、次から次へと浮かぶ。王都からは遠いし、便利とはお世辞にもいえなかったが、住人はみなあたたかく優しかった。
その憂き目を、自分さえいたら防げたと言えば、傲慢であろう。
けれど、もしかすると、の、可能性が一片でもある限り、ライルは自分を責めずにはいられなかった。
歩いていると、ふと、事件前日、リノンと過ごした、リンゴの樹のある丘を思い出す。
「………行ってみるか」







そこには先客がいた。
かのあの日は暗いためにうっかり見間違えたが、今度はさすがにわかる。
「リノン」
後ろに立って声をかけると、しゃがんでいた彼女は気付いていたようで、おもむろに立ち上がる。
「ライ、退院おめでとう。もう平気?」
「胸の傷は一生残る、だって」
「私の腕がもっと良かったら、ちゃんと治してあげられたのに」
「いいんだ」
何事もなかったように、この場所は相変わらず穏やかな風が吹いている。
水平線を見つめながら、二人はしばらく無言だった。
ややあって、リノンが、口を開く。
「ここに、お墓をつくったの」
彼女の目線をたどれば、確かにリンゴの樹の根もとに、簡素で新しい墓標がある。
ラゾー村民ここに眠る、と刻まれていた。
「見晴らしのいい、素敵な場所だから、みんなも嬉しいかなって」
「うん。いいと思う」
墓石にひたりと手をつけて、撫でる。

「みんな。…守れなくて、……ごめんな」

屈んで頭を垂れると、急に涙がこみ上げてきたので、少しの間だけ泣いた。


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作品名:D.o.A. ep.1~7 作家名:har