D.o.A. ep.1~7
Ep.1 夢(記憶の過去)
逃げなさい!
そう叫んだ女は、母親か?あるいは姉だったかもしれぬ。
聞き分けている余裕などなく、二階へ逃れた。
背後で、母か姉が後ろから斬られる。絹を引き裂くような悲鳴。女の身体が、庇うように覆い被さってくる。
触れると、手が生ぬるい液体で赤く染まる。
喃語のような力のない声だけが喉から漏れる。がくがく震えが止まらない。
女の体の下敷きになった生存者は、もちろん見過ごされることはなかった。
「ガキはどうする」
「…好きにしろ」
さらに向こうの別の男は、今まで見てきた誰よりも冷たい眼をして、何の素っ気も無い声でそんなことを言う。
頭の中は真っ白だったが、持ち上げられた刃から、見逃してもらえないということだけは理解した。
体の下から這い出して、必死で逃げだす。
闇雲に走ったが、数メートルもしないうちに、何かに躓いて転倒した。
「っぁ…、あ…う」
わざとらしくゆっくりと、しかし、必死で走った距離を数歩でつめてくる。笑いながら。
振りかぶる刃が、窓から入る月光に反射する。
――――それが目に入った時、視界は闇に覆われた。
:
:
:
作品名:D.o.A. ep.1~7 作家名:har