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ラベンダー
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novelistID. 16841
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銀髪のアルシェ(外伝)~紅い目の悪魔(2)~

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槙人は思わず悲鳴を上げた。そしてハンドルに顔を伏せた。

「赦してくれ!…死ぬから!俺も死ぬからっ!!」

そう震えながら言い、恐る恐る顔を上げた。
すると老女の姿はなく、燃えるような紅い目をした男が、こちらに手のひらを向け立っていた。両頬には長短2本ずつ傷がある。

「!!…悪魔!?」

槙人が思わずそう言った。
すると、その紅い目の男が消え、助手席に現れた。

「!!」

槙人は驚いて、助手席の男を見た。

「シートベルト」

男が言った。

「…え?」
「シートベルトつけろ。減点されるぞ。」

男はそう言うと、先にシートベルトをつけた。

「…はい…」

素直に槙人もシートベルトをつけた。

「お前が死なせた婆さんからだ。」

男が前を見たまま言った。

「!?」
「君はまだ若い。罪を償ってやり直せ。」

その言葉に槙人は目を見張った。…そしてその目から新たな涙が溢れ出た。

……

浅野がリビングのソファーで、腹を抱えて笑っている。
向かいのソファーには、ザリアベルがむっとした表情で座っていた。

「だめだ…何度思い出しても笑える…」
「…やめろ。思い出すな。」
「…ぶふっ…!」

浅野は口を押さえたが、結局また吹き出して笑いだした。

「…ザリアベルが…真顔で…シートベルトつけて…ひぃー…」

浅野はもう押さえきれずに、ソファーに仰向けに倒れ込んで笑い転げた。
ザリアベルが一層むっとした表情をした。

「規律は守らなきゃいけないだろう。」
「…さすが、元軍人さん…。」

浅野は笑いながら言った。

「でも…でも…警察署まで同行することないじゃないですか!」
「…途中で逃げられても困ると思ってな。」

ザリアベルがむすっとしたまま言った。

「あー…おかしい…」

浅野はやっと笑いを押さえ、体を起こして座った。

「そうだ…圭一君が昨日、クリームシチューを作り置きしてくれたんですよ。食べます?」
「食べるにきまっているだろう。」
「了解!」

浅野はそう言って敬礼すると、立ちあがった。
ザリアベルが言った。

「…バケットは?」
「あっ!忘れてた。」
「買ってこい。」
「きゃん!」

背中を蹴られたような格好をして、浅野の姿が消えた。
ザリアベルはため息をついた。そして今になって顔を赤くし、両手で顔を塞いだ。

(終)