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ラベンダー
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novelistID. 16841
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銀髪のアルシェ(外伝)~紅い目の悪魔(2)~

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「!?」
「おおお!君すごいねっ!スポンジが君の手の中で増えてるよー。どうやったの?」
「????」

子どもは驚いている。

「ねっどうやったの?」

浅野が腰をかがめて男児にそう言うと、男児は目を見開いたまま首を振った。

「そうか、困ったなぁ…。じゃぁもう1度握って。」

浅野はそう言って、両手で男児の手を包んだ。
その時、男児が「はっ」とした顔をした。

「…あれ?今のでばれた?」

男児はうなずいている。
周囲の子どもが集まってきて、男児の顔を覗いている。

「言っていいよ。」

浅野がそう言うと、男児がうれしそうに「今、隠してたのを僕に持たせたの!」と言った。

「そうっ!せいかーい!」

浅野がそう言って拍手をした。周りの子どもたちは、まだよくわからないような顔をしながら、拍手をしている。

「タネはこうだ。」

浅野はまたスポンジを取り出して言った。

「最初から、君に持たせたスポンジは1つじゃなかったんだ。1つだけを皆に見せて、君に持たせる時に隠していたスポンジを一緒に持たせた。」
「なーんだ!」

1人の子どもが言った。

「そう。なーんだ…なんだよ。簡単だろう?」

子どもたちがうなずいている。

「さ、手を開いてみて。」

まだ手を握っていた男児に手を開かせた。たくさんのスポンジが溢れ出てきた。

「わーっ!!」

子どもたちが驚いている。

「僕はさっき、君の手を両手で包む時に、隠していたスポンジをまとめて君の手に乗せたんだ。君はそれを感じたんだよね。」

男児がうれしそうにうなずいている。

「このマジックのタネは、スポンジと言うのがポイントだ。スポンジはぎゅっと握ると小さくなるから隠しやすい。…周りにわからないように隠す練習をすれば、誰だってできるよ。家で練習してみてね!」

子どもたちが「はーい!」と返事をした。

「いいお返事だねー!…じゃぁ、最後のお決まりのマジックです。これはタネは教えられないけど…やっていいかな?」
「やってっ!」

1人の子どもが言った。

「お、君は昨日も来てたよね。今日も自信があるんだな?」
「うんっ!」

子どもが嬉しそうにした。
それまで黙って見ていた雄作は、何があるのかと思わず椅子に座っている母親たちの後ろまで近寄った。

「では、やります!」

浅野がそう言うと、右手を腰のあたりでこすり、手のひらを上に向けた。ぼっと小さな炎が立った。

「!!」

雄作は驚いた。こんなところで火を使って大丈夫なのか?…と人ごとながら思った。

「はい。1番は誰だ?」
「はいっ!」

さっきの子どもが手を上げた。

「よし、じゃぁ君からだ。」

子どもは、浅野の手の上にある炎に恐る恐る指を差しこんだ。

「!!」

雄作は驚いたが、子どもは「熱くないっ!」と嬉しそうに言った。

「よーし、君は合格だー!昨日もいい子だったんだね!」

子どもがうなずいた。雄作は意味がわからず、ただ立ちつくしていた。
その後も順番に子どもたちが指を差し込んで言った。皆「熱くない!」と言い、うれしそうに離れていく。
最後の女児も「熱くない!」と嬉しそうに言った。

「おーっ!今日は皆いい子だ!」

母親達が拍手をした。

「じゃぁ、そこのお兄さんもやってみようか!」

浅野がそう言って、雄作を見た。

「!?」

雄作は面食らったように、目を見張った。

「大人もやらなきゃね。」

浅野がそう子どもたちに言うと、子どもたちが皆一様にうなずいて、雄作の方を見た。

「さぁ、どうぞ、こちらへ!」

浅野にそう言われ、雄作は恐る恐る浅野の前に行った。

「子どもたちは誰も熱くないと言っています。…だから、大丈夫。この炎の中に指を入れてみて。」

雄作はぼんやりと炎を見た。
子どもたちが、興味深げに雄作を見上げている。

浅野は優しい目で雄作を見ていた。

「さぁ、どうぞ。」

雄作はごくりと唾を飲み込むと、指を恐る恐る入れた。

「!熱っ!!」

雄作はそう言って、慌てて手を引っ込めた。
かなり熱い。雄作は火傷をしているかと指を見た。…だが、指には何も痕はなく痛みもない。
子どもたちが驚いた表情をして、自分を見ている。

「…何か、隠しごとが?」

浅野が急に声を低くして、雄作に言った。

「!!!」

雄作は固まった。
浅野はまるで心を見通しているような鋭い目で、雄作を見つめている。
雄作も驚いた表情のまま、浅野を見つめ返していた。

「お兄ちゃん…嘘ついたらどろぼうになるんだよ?」
「!」

傍にいた女児にそう言われ、雄作は驚いてその女児を見た。

「隠しごとはいけないんだよ。」

女児が澄んだ目で雄作を見ながら言った。雄作は思わず頷いた。
雄作を見る浅野の目が優しくなった。

……

雄作はショッピングセンターを、急ぐように出た。

(…自首しなきゃ!)

何故かそう思えた。…さっきまで思っていたことを恥ずかしく感じた。
そして携帯電話を取り出し、地図で警察署を検索しようとキーを叩いた。

「お送りしますよ。」

その声に驚いて振り返ると、浅野が立っていた。

「!!!」

雄作は驚いて、浅野を見た。
浅野は肩にかけているかばんをかけ直すと「さぁ」と言って、手をある方向へ指し歩き出した。
雄作は思わず浅野について歩いた。
何故だかわからないが、浅野に全て見透かされているような気がした。

「お友達は…」

浅野のその言葉に、雄作はぎくりとした。

「…死ぬつもりです。」

浅野がそう言って、雄作を見た。
雄作は、浅野がどうしてそこまで知っているのかという疑問よりも、槙人への不安が先に立った。

「!?…あいつ…」
「ええ。今、死ぬ場所を探しているようですね。」
「…!…それだけはだめだ…」

雄作が思わず呟いて、目を泳がせた。浅野が頷いて言った。

「あなたが早く自首して、そのことを警察に言うんです。…警察ならすぐに見つけてくれるでしょう。」
「…!…はい!」

迷いのない雄作の目を見て、浅野が微笑んだ。

「私の車で警察署までお送りします。」

浅野はそう言うと、急ぐように駐車場に向かって駆け出した。雄作も慌てて浅野の後ろについて走った。

……

1台の車が、埠頭に止まっていた。車のバンパーに傷が入っている。
運転席には、1人の男が涙を流しながら歌を口ずさんでいた。槙人である。
歌い終わると、泣きながらうなだれた。

「なんでだよ…。なんでこんなことで俺…死ななきゃならないんだよ…。あんな夜中に、ふらふら歩いてる方が悪いんだよっ!!」

槙人はそう叫ぶと、きっと前を向きギアをバックに入れた。
車が音を立てて、スピードを上げバックした。
これ以上下がれないところまで行くと、槙人はギアをドライブに入れた。

…しかし、そのまま動けなかった。
アクセルを踏もうとするが、震えて踏めない。
槙人はただ泣いている。

…だが心を決めると、強く目を閉じアクセルを強く踏んだ。
車が猛スピードで走りだした。
だが「ガン!」という衝撃を受け、車が止まった。

「!?」

槙人が目を開くと、前に血だらけの老女が立っていた。