夢と現の境にて
甘えることも、頼ることも、助けてもらうことも
それは全て、人から人へと教わるものだと思っている。それは両親だったり、兄弟だったり、友達だったりと、人と人とが触れ合えば、接し合えばいつか分かることだろうと俺は思っていた。そしてそれを皆当たり前の様に身に着けるものだと
だけど、こいつ 狭霧は
全くといっていいほど皆無だった。
それはきっと、普通の人間が抱えているものとは、比べ物にならないものだからで
信じてもらえないもので、話してはいけないものだった
ましてや俺や、普通の人間に
こいつに何をしてやれるかといえば…
(こういうことしか、できねぇよ――)
まだ嗚咽を零して泣き続ける狭霧をきつく、しかし壊れないように抱きしめた。
まるでガラス細工のように脆く、だけど美しいものだと俺は思っている。そして、心の奥底でこれが、欲しい、と言っている。同情なんかでは、そんなことで表せるような感情では、既になくなっていた。
片手で抱え込んでいる狭霧の頭を優しく撫でる。外の外気や日に当たらない身体は、狭霧だけの香を放っているようだった。理性が少し揺らぐ。しかし俺は直ぐにその考えを消し去った。こんな状態の狭霧にこれ以上の何をしようというのか
狭霧はそれどころではないというのに、自分は…
嗚咽が収まっていく。そして眠りに落ちていこうとする狭霧の背を、落ち着かせるように撫でた。
これは、これは俺の願望でしかないけれど…
そっと目を閉じて、今この瞬間だけの我儘を
俺無しでは眠れないようになればいい
俺だけを頼って、俺だけを欲しろ
そうしてずっと俺をお前の隣にいさせろ
そう、俺は願ったのだ