未定
序文
遥か上空に真っ青な絨毯がどこまでも広がっている。かんかんと照りつける太陽は景色を揺らし、身を焦がす。
地平線の果てまで立ち並ぶ白亜の建物は、光を反射させつつも威圧感を放ち、覆いかぶさるようにそびえ立っている。
アンバランスな街。その中心では、人間が行き交う。地面はどこまでも白く、人の歩道用に建物の影のように真っ直ぐ黒い道が伸びている。
「H21保護地区。安全確認終了しました。死亡者三名、出生者六名。問題ありません」
どこからともなく無機質な声が響き、反響する。女声で感情が全くなく、機械のようだった。
富裕層エリア、中心街「h21+」に一人の少年が立っていた。双眸は、鋭く光る紅。異質な瞳は、彼を異様な雰囲気で包んでいた。繊細な白髪が風になびき、漆黒の体のラインを強調する細身のスーツに触れる。168センチほどの身長で、中世的だ。
彼──伊崎リクは、煩わしげに太陽から目をそむけた。
「うん、今から行くよ。心配しなくてもいい。うん、はい。分かった」
誰ともなく言葉を交わし、音も立てずに一瞬のうちに消え去った。人々は、平然とその横を通り過ぎ続けていた。