桃色伝説(仮)
「……っ!」
小さな女の子は目に涙をため、息を飲む。
目の前には赤鬼や青鬼の無数な鬼がいた。
小さな女の子の目の前にいる赤鬼が手を上げた。
「――女の子に、手を上げるのは……どうかと思うな」
小さい女の子を片手で自分の胸に近寄せながらも背後にいる赤鬼の攻撃を反りのある刀で防いでいた。
「零音お姉ちゃん!」
「大丈夫そうね」
微笑みを浮かべながらも零音は小さな女の子の頭を撫でた。
「……走って逃げなさい」
女の子の耳元で鬼達に聞こえないように呟いた零音は女の子を近寄せていた手を離した。
「行って!」
遠くなる女の子の背中を見送りながらも奥歯を強く噛み、刀を持つ手を強めた。
同時に鬼の手をはじき返した。
「この村に手を出したことを後悔させてやるよ……」
深く息を吐くとしゃがんでいた状態からゆっくりと立ち上がり鬼達を見た。そして刀を構える。
「……天城 零音、参る」
一瞬にして、冷たく鋭い目つきに変わる。