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むべやまかぜを 風雲エターナルラブ編序

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 大村はサラリーマン編集の弱さを見抜いていた。あの程度の人物でもできることなのだから、老獪な業界ゴロには脇の甘い会社は草刈場でしかないだろう。それが良いことなのか悪いことなのかは、丸山花世には分からないが。
 「同人のエロゲーもそう。女がケータイなら男はエロ同人。作っている人は何の保証も無い、学歴も血統の裏打ちも無い。そういう何にも持ってない人間が作っているものしかユーザーって信じられない。っていうか、それは、大手の版元とかテレビ局の人間がこれまであんまりにも思いあがって好き勝手をやってきたからなのかな。どっちが先かよく分からないけど……」
 「花世。そこまで分かっているならば、質問。これから……これからはどうなるのかしら?」
 店の主は楽しそうに訊ねる。
 質問をしていて楽しい相手というものがあるのだ。同じような感覚を持ち、同じよう知識と思考。ただ若干自分とは違う考え方の持ち主。従姉妹、もといまた従姉妹同士はなんとやら……。
 「これから……これからの情勢を見抜くことができれば、大村さんじゃないけど大儲けできるんじゃないかしら?」
 「金には別に興味ないよ。追えば逃げるのが金だって、アネキよく言うじゃん」
 「そうね」
 「うん。でも……そうだね」
 丸山花世は思いをめぐらせる。そして言う。
 「大手って呼ばれるところ、東大卒とか、正社員が幅を利かせる会社はどこもダメだと思うなー。出版にせよ、テレビ、ゲーム。ユーザーとかより目線が下じゃないとやっぱりダメなんだと思う。手厚い福利厚生とか。そういうところは多分、その時点でもう共感してもらえないんじゃないかなー。お客はどいつもこいつもみんな気が立ってっからさ……いっそ、小説もゲームもみんな、刑務所の中で囚人に作らせたらどうかな。結構、客つくと思うよ。脱獄のゲームとか……」
 丸山花世はつまらなそうに言い、そして、そこで女主人は最後のグラスを洗い終えた。無駄話はおしまい。
 そこからが大井弘子の本題。
 「花世、暇なようだったら仕事、一緒にやってみる?」
 女主人タオルで手を拭きながら妹に言った。唐突な、とても突然な誘い。
 けれど小娘は慌てない。もう長い付き合いであるので、アネキ分がどういう人物かは分かっている。
 「……どういう仕事?」