きらめきの風
その日。渡辺はいつもの通り、Kawasaki GPZ750R Ninjaのエンジンを暖めながら煙草をふかしていた。
「お疲れ様です。」
バイトを終えた詩織が店の裏口から出てきた。
「おう、もう帰るの?お疲れさん」
「はい、早く帰らないといけなくて。お仕事かけもち、大変ですね。」
「おれは仕事が定時に終わるからね。コイツには金かかるし」
そう言ってバイクを軽く小突いた。
そこへ、ゴミ袋を手に提げた美奈子が出てきた。
「シオちゃん、早く帰りな。またオヤジさんがくるよ。」
「はい、いつもすみません先輩…」
「いいって。ワタシは9時からの仕事なんだから、あとはやっておくから」
9時に仕事を終えたみんなは、それぞれ駄弁りながらお茶を飲んだり、店で売れ残った寿司なんかで夕飯を済まそうという奴もいた。
詩織ももちろんバイト仲間と仲良くしたかったので混ざってお茶をしたかったが、自宅が店から100mほどしか離れておらず、
遅くなると(9時半をすぎると)心配性の両親がたまに店まで迎えに来たりしていた。
ある日、9時からのバイトの渡辺たちはいつもの通り30分ほど前にはホールに出ていた。相変わらず店は混んでいる。
美奈子たちと詩織が仕事で一緒にいられるのはいつもこの30分くらいしかなかった。
「大事にされてるんね」
そう言う美奈子に詩織はちょっとむきになって答えた。
「全く冗談じゃないですよ!もう高校生なんだから、バイト帰りくらい…こんなに近いんだから心配すること無いでしょう。」
「…あのね、シオ。あんたもう少し自分が幸せだってこと自覚しな。」
「私ははやく独り立ちしたいんです。先輩みたいに…」
「ワタシは生活かかってるんだ。あんたみたいに親の下でのうのうと暮らしながら遊びのお金稼ぐためにバイトしてるんじゃないよ」
「美奈子、10番テーブル、おあいそだって」
カウンターから西村が声をかけた。
美奈子がトレーを持って水場を出て行った。
「ああいう言い方はね…。気にしないほうがいいよ」
渡辺がちょっと落ち込んだ様子の詩織に声をかけた。
「大丈夫です。いつものことです…」
戻ってきた美奈子に、詩織が言った。
「先輩、明日誕生日ですよね。部屋行っていいですか?ケーキ買っていきます!」
美奈子と詩織は、はたから見るとレズか?と思うほど親密そうに見えた。いや、一方的に詩織が美奈子を崇拝している、ようにも見えたが。
「明日?…明日は柏木も来るよ?」
「え、あ、そうですよね。じゃあ明後日にします。」
くすり、と美奈子は笑いながら、言った、
「明日でいいよ、みんないたほうがいい。」
次の日、詩織は美奈子の好きなイチゴのデコレーションケーキを買って、マンションに訪ねていった。
「相変わらずですね…先輩。」
お世辞にもきれいとはいえないワンルームのマンション。部屋の大きさは6畳ないんじゃないか。
「掃除するヒマないからね」
「今度、掃除しに来ますね…ヒマだし。」
そうこうしているうちに、柏木も来た。
「おう、シオちゃん来てたんだ。」
「すみません、おじゃましちゃって」
「おじゃま?そうだね…でも俺泊まるから、問題ナシ。」
そのセリフを聞いて、詩織が顔を赤らめた。
「柏木、シオには強烈」
「そうか。ゴメン、シオちゃん。」
3人でささやかな誕生会。
そこで、美奈子がシオに向かっていった。
「シオちゃん」
「なんですか、先輩。」
「シオちゃんに話してないことがあるんだ。私、本当は今日で20歳じゃなく、18歳なんだ。」
「…え???私がいま16歳だから…いやもう少しで17歳…学年ひとつしか離れてなかったんですか???」
「うん。あの店、9時以降は18歳以上しか働けないじゃん?シオを信用してなかったわけじゃないんだけど、シオちゃん嘘つけない性格だから、話せなかった。」
「びっくりしました…だって一つ上には見えないし」
「美奈子は老けてるからな」
美奈子が柏木の頬にパンチした。
「お疲れ様です。」
バイトを終えた詩織が店の裏口から出てきた。
「おう、もう帰るの?お疲れさん」
「はい、早く帰らないといけなくて。お仕事かけもち、大変ですね。」
「おれは仕事が定時に終わるからね。コイツには金かかるし」
そう言ってバイクを軽く小突いた。
そこへ、ゴミ袋を手に提げた美奈子が出てきた。
「シオちゃん、早く帰りな。またオヤジさんがくるよ。」
「はい、いつもすみません先輩…」
「いいって。ワタシは9時からの仕事なんだから、あとはやっておくから」
9時に仕事を終えたみんなは、それぞれ駄弁りながらお茶を飲んだり、店で売れ残った寿司なんかで夕飯を済まそうという奴もいた。
詩織ももちろんバイト仲間と仲良くしたかったので混ざってお茶をしたかったが、自宅が店から100mほどしか離れておらず、
遅くなると(9時半をすぎると)心配性の両親がたまに店まで迎えに来たりしていた。
ある日、9時からのバイトの渡辺たちはいつもの通り30分ほど前にはホールに出ていた。相変わらず店は混んでいる。
美奈子たちと詩織が仕事で一緒にいられるのはいつもこの30分くらいしかなかった。
「大事にされてるんね」
そう言う美奈子に詩織はちょっとむきになって答えた。
「全く冗談じゃないですよ!もう高校生なんだから、バイト帰りくらい…こんなに近いんだから心配すること無いでしょう。」
「…あのね、シオ。あんたもう少し自分が幸せだってこと自覚しな。」
「私ははやく独り立ちしたいんです。先輩みたいに…」
「ワタシは生活かかってるんだ。あんたみたいに親の下でのうのうと暮らしながら遊びのお金稼ぐためにバイトしてるんじゃないよ」
「美奈子、10番テーブル、おあいそだって」
カウンターから西村が声をかけた。
美奈子がトレーを持って水場を出て行った。
「ああいう言い方はね…。気にしないほうがいいよ」
渡辺がちょっと落ち込んだ様子の詩織に声をかけた。
「大丈夫です。いつものことです…」
戻ってきた美奈子に、詩織が言った。
「先輩、明日誕生日ですよね。部屋行っていいですか?ケーキ買っていきます!」
美奈子と詩織は、はたから見るとレズか?と思うほど親密そうに見えた。いや、一方的に詩織が美奈子を崇拝している、ようにも見えたが。
「明日?…明日は柏木も来るよ?」
「え、あ、そうですよね。じゃあ明後日にします。」
くすり、と美奈子は笑いながら、言った、
「明日でいいよ、みんないたほうがいい。」
次の日、詩織は美奈子の好きなイチゴのデコレーションケーキを買って、マンションに訪ねていった。
「相変わらずですね…先輩。」
お世辞にもきれいとはいえないワンルームのマンション。部屋の大きさは6畳ないんじゃないか。
「掃除するヒマないからね」
「今度、掃除しに来ますね…ヒマだし。」
そうこうしているうちに、柏木も来た。
「おう、シオちゃん来てたんだ。」
「すみません、おじゃましちゃって」
「おじゃま?そうだね…でも俺泊まるから、問題ナシ。」
そのセリフを聞いて、詩織が顔を赤らめた。
「柏木、シオには強烈」
「そうか。ゴメン、シオちゃん。」
3人でささやかな誕生会。
そこで、美奈子がシオに向かっていった。
「シオちゃん」
「なんですか、先輩。」
「シオちゃんに話してないことがあるんだ。私、本当は今日で20歳じゃなく、18歳なんだ。」
「…え???私がいま16歳だから…いやもう少しで17歳…学年ひとつしか離れてなかったんですか???」
「うん。あの店、9時以降は18歳以上しか働けないじゃん?シオを信用してなかったわけじゃないんだけど、シオちゃん嘘つけない性格だから、話せなかった。」
「びっくりしました…だって一つ上には見えないし」
「美奈子は老けてるからな」
美奈子が柏木の頬にパンチした。