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冬野すいみ
冬野すいみ
novelistID. 21783
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光った鳥

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ある、晴れた日。私は鳥をむかえに行く。
晴れ晴れとした空は青いばかりで、空っぽに感じる。
空が私の上を覆っているのか、私が空に落ちているのか、感覚があやふやになる。空は理解できない水色。

 地上に目を戻す。
 遠い山の向こう、川をこえて、道をゆき、はるか遠くのまちまで私は鳥に会いに行く。
鳥は小さな小さな動物屋さんでひとり私を待っている。
古びて忘れ去られたようなお店。汚くてボロボロの建物は存在しているのが不思議だ。
 けれど、みじめだなんて思うのはきっと違うのでしょう。
そんな感傷はそれらには無関係だ。ただ、そこに立っている、それだけで何物よりも強いのだろう。
まあ、そんなことすらどうでもいいか。

 古びたその動物屋さんはまちに忘れ去られて、それゆえか奇妙な存在感を放っていた。


 私はまちが好きだ、青も好きだ、空はどうでも、動物はあまり好きじゃない。あの日、私はまちを歩いていた。
 その時の私はただ歩くことだけを思っていた。
足は一歩、一歩と前に進み、ただ無機質に動いていた。白く残酷な足。無機質なものは美しいのだけれど。足は生きているから何も美しいとは思えない。

 そして、その店の存在に気付かない私は、何の感情も無い生きる人形として通り過ぎようとした。


 そのとき、ふと、

 鳥の声がしたのだ。ちいちい。ちいちいちいちい、ちちち。ちちち、ちいちい。ちいちい……。
鳴りやまない耳鳴りのようにひたすらに音は描かれ続けた。
私の頭は鳥の声でいっぱいになり、そのうちまるで私の叫びのように心になじんでしまった。

 ああ、うるさいうるさい……。

 私の心の中もざわざわと騒音が鳴りやまなくなり、くらくらと渦の中に沈んで行きそうになる。
鳴りやまない叫び声。鳥のもとへ行かなくては…。私の足はふらふらと店の中へと吸い込まれていった。
作品名:光った鳥 作家名:冬野すいみ