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Knockin’on heaven’s door

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「クレームになったらどうしてくれるのさぁ? 頭下げに行くのって、アタシなんだけどぉ?」
「それはぁ……はい、すいません」
「それとぉ、最近好調だったから返済は順調に進んでいるワ。完済が見えてきたって感じかしらねぇ」
「そうですか……、なんだか複雑ですね。僕は天国に行けるだけの資格は無いっていうのに」
「何言ってるのぉ、さっき他社の小娘に説教したばっかりじゃん。あなたが天国に行きたくないのは構わないけど、あなたの魂は天国として必要なのよ」
 日下部さんが言っている事は理解している、だが納得はしないようにと心に決めている。そうでなければ、今まで僕が天国に送り届けた御霊の方々に失礼なのだと思っているからだ。
 天国は良質な魂が必要で、それが僕のような「大罪」を犯した者の魂でさえ必要とするほどに「財政難」なのだ。早い話、誰の魂でもとにかく必要としている。そんな天国の状況では【質より量】を今は求めていて、マイペースで仕事を進める僕には少々居心地の悪い場所になりつつあった。
「ま、今月も残り少しだけど、目標昇天数をクリア出来るように最後までがんばりましょーよ」
 少し考え込んだ僕に、そんな風に日下部さんは軽いノリであいさつをして帰って行った。僕には丁度いい上司なのかも知れない。


 日が沈み眼下の街並みが灯りで色鮮やかになり始める頃、僕は昼に昇天させた松田さんの事を思い出していた。
「悪い事したな……、出来ない約束をしたな……」
 僕には松田さんの奥さんを待つ事も連れて昇る事も出来ないって、自分でも分かっているのに……。
 自分自身では親身になって対応しているつもりだったのに、いつの間にか「仕事」として割り切っていい顔をしていたのだろう。
「なんか……、無理なのかなぁ?」
 誰に問いかけたわけでもなく、答えてもらいたかったわけでもなく、僕はそんな言葉をつぶやいてしまった。
 しかし、僕は天導士を続けなければ天国には行けない、「僕には資格がない」などと言っておいて本音ではやはり昇天したいと思っているのだ。


 そんな事を僕は見慣れた街を見下ろしながら、答えなど出すつもりもないのに考えてみた。

作品名:Knockin’on heaven’s door 作家名:みゅぐ