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ちょっと怖い小咄【一幕】

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小咄其の八 『国家からのプレゼント』


 軽佻浮薄なこの国で、最初は勢いが良かったが今やすっかり落ち目の閑首相から
全国民に向けての演説があった。
「えー、国民の皆さん、景気回復もマニュフェストもまだまださっぱり進まず、ほ
んとに申し訳ない」
全然申し訳なさそうではない、それどころかどこか他人事のような声がこだまする。
「せめてものお詫びに、政府は国民ひとりひとりに、新型スマートフォンを無償で
プレゼントすることにしました! おじいちゃん、おばあちゃんから赤ちゃんの分
まであります。存分に使ってくださいっ!!」
 税金も援助もいやだがタダならなんでも欲しい、という国民性にこの政策は受け
た。瞬く間に携帯普及率は100%を超えた。首相はまた「時の人」に返り咲いた。

 官邸で。にやつく閑首相に後ろから静かに声をかける者がいた。
「総理、今回はうまくいったな」
「ああ戦国さん、おかげさまで国民全員にID番号を登録することが出来ましたよ。
やつら勝手に個人情報もドンドン入力するし、代金は税金で引かれてても気にしな
いし。K国からのスマートフォンも大量に流通できましたよ」
「住基ネットなぞ使わんでも最初からこーすりゃ良かったんだ、わははは、は。」
「かーらかんからから♪」
得意満面で部屋を出ようとする元官房長官は、思い出したかのように傀儡に囁い
た。
「待ち受け画面に私の顔写真、着メロに我が党のテーマソングをそれとなく紛れ込
ませるのも、忘れるなよ、うん」

 首相は頭を下げ、裏の首相を見送った。

                              ・・・おしまい。
作品名:ちょっと怖い小咄【一幕】 作家名:JIN