DIVISION GRAFFITI -境界の落書-
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青年とメイは家路を少し離れて歩いていた。青年は、しきりに辺りをキョロキョロしている。少し嬉しそうだった。
「懐かしいな、この辺りは昔と変わらん。こういうところもあるのか」
「ねぇそこの根暗」
「え゛! それわしのこと!!?」
「だって名前教えてくれないいんだもの。もしかしてあなた、重罪犯罪人とか?」
「ち・が・う! それはいくらなんでも失礼すぎるぞ、もうこれ以上聞くな! ――――不幸になるぞ!」
「そんな説得力の無い・・・・・・」メイは風で乱れた髪を整えて、青年の横に並んだ。それを見て、青年は顔をそむける。つやのある綺麗な茶髪が、風に乗って後ろに流れた。
「もしかして・・・・・・シャイ?」
「とにかく! わしとこれ以上かかわるとロクなことが無いから! 後悔するぞ――――」
青年がそこまで言いかけた時、何かがメイの視界を貫いた。
それはメイのすぐ横を通っていった。それも『青年の左胸』を、後ろから日本刀が――――突然、水平に突き抜けた。
青年はゆっくりと倒れていく――――。
そのまま地面に当たって、少しはねた。その音で、メイは全てが現実なのを知った。
「いっ、・・・・・・いやあああああっ!!!」
突然、背後から聞き覚えのない低い声がした。
「おっと、騒ぐんじゃねえぞ小娘。いや、メイ=ランテス」
背後の影はメイの口をふさぐと、後ろから腕をひねって動けないように固定した。力が強くて反撃すらできない。
男は、青年に突き刺さった日本刀を無造作に抜くと、そばに転がっていた『メイの小物入れ』に突き立てた。それをそのままひょいっと持ち上げる。
「ン―――!!」
「そうそう、これが欲しかったんだ。早いとこ持っていかねぇとな」
「ン―――! ン――――!!」
――――根暗さん!
「安心しな、おまえは殺しゃしねぇよ。これの使い方を吐かせなきゃならねぇからな。おら行くぞ女!」
メイが連れて行かれる所を、青年は霞む目で追っていた――――――。
作品名:DIVISION GRAFFITI -境界の落書- 作家名:春 ゆみ