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死神憑の

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11歳の夏



なんとなく一人称を『僕』から『俺』に変えてみた。
周りの男子達は皆自分の事を『俺』と言ってる。

…なんとなくじゃないね、多分恥ずかしかったんだ。

それと俺はもう『パパ』とか『ママ』じゃなくて『お父さん』『お母さん』って呼んでる。
これも…恥ずかしいから。

ともかく俺の今はそんな時期にあるってことだ。

そんな時期に、お父さんが入院してしまった。

お父さんはもともと病気を持っていて、それが最近になってだんだん悪化してきたらしい。
病名はわからないけど、今はもう歩いたりすることが辛いらしい。
お母さんと一緒によく病院へお父さんを見に行くけど、父は相変わらずベッドの上でさえ絵を描いている。
入院してるはずなのに、そんなに辛そうな感じでもない。
むしろ入院を、楽しんでる感じだった。

俺はそんなお父さんを見て、特にこれと言ってそんな心配はしなかった。

でもお母さんは違う感じだった。

なんて言うか、そう、辛そうだった。

入院してるお父さんより辛そうだった。

小さい頃に覚えがある日々に見えたお母さんの顔じゃなかったんだ。
作品名:死神憑の 作家名:咲山 湊