黒い空と手
あなたは手をそっと私の方へ向ける。少しだけ…。白い指。
私は受け入れられている、拒絶されている。
私も少しだけ手を向けた。どちらも触れることはない。冷たい手。
「空は黒い。青い。赤い。緑だ」
「色は綺麗だ」
しばらくの時間、二人はただ空を眺めていた。沈黙は時が止まったようで不思議だ。
閉じ込められた。
言葉。
それならいいんだよ。
私だってそれならいいんだよ。
あなたは地に寝そべった。私はあなたが大地だと感じた。大きく広く、終わりなく溶けていく。
あなたが白く光るように見えた。
ゆっくりと……
あなたは空へ浮かんでいく。黒い空へ落下していく。
すこしだけ、手がこちらへ向けられる。あなたのゆびはとても眩しくて、私の目には涙が浮かぶ。
私の指もあなたへと向ける。
そして、あなたは遠くへと吸い込まれていった。
一瞬触れることができなかった。白い指。
あの日は遠い。あなたの手はもうここにはない。
目を閉じてただこの手に触れる。思い出せない夢をたしかめるように。あなたの冷たい手を。とてもあたたかいぬくもりを。