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冬野すいみ
冬野すいみ
novelistID. 21783
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黒い空と手

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 あなたは手をそっと私の方へ向ける。少しだけ…。白い指。
私は受け入れられている、拒絶されている。
私も少しだけ手を向けた。どちらも触れることはない。冷たい手。

「空は黒い。青い。赤い。緑だ」
「色は綺麗だ」

 しばらくの時間、二人はただ空を眺めていた。沈黙は時が止まったようで不思議だ。
閉じ込められた。

言葉。


 それならいいんだよ。

 私だってそれならいいんだよ。



 あなたは地に寝そべった。私はあなたが大地だと感じた。大きく広く、終わりなく溶けていく。
あなたが白く光るように見えた。

 ゆっくりと……

 あなたは空へ浮かんでいく。黒い空へ落下していく。

 すこしだけ、手がこちらへ向けられる。あなたのゆびはとても眩しくて、私の目には涙が浮かぶ。
私の指もあなたへと向ける。
そして、あなたは遠くへと吸い込まれていった。

 一瞬触れることができなかった。白い指。




 あの日は遠い。あなたの手はもうここにはない。

 目を閉じてただこの手に触れる。思い出せない夢をたしかめるように。あなたの冷たい手を。とてもあたたかいぬくもりを。

作品名:黒い空と手 作家名:冬野すいみ