サイコシリアル [2]
「霞ヶ窪桜。あなたは、惨めね。本当に惨め。哀れですらあるわ。いや、哀れという感情を抱きたくない程までに惨めよ」
今まで気を失っていたであろう、戯贈が口を開いた。
いつもよりも静かに、でも、力強く。
「戯贈!」
僕は咄嗟に叫んだ。
「あら、涙雫君じゃない。何をしているの?」
「何してるじゃねー!」
「うるさいわね」
と、戯贈。
まだ意識が朦朧としているのだろう。だんだんと声の張りが弱くなってきている。
「大丈夫よ、心配しないで。戯贈さんは今から死ぬのだから」
分かる。
霞ヶ窪が、この状況に飽きて来ているのが手に取るように分かる。
その口調が、その呼吸がそれを表しているのが分かる。
何か、何か霞ヶ窪の興味をそそる話をしなくてはならない。
でないと、戯贈は━━死ぬ。
否、食われる。
それだけは許せない、許してはいけない。
食う、という行動を許してはいけないし、食う、という概念も許してはならない。
そして何より、戯贈をターゲットにした霞ヶ窪を許すこと出来ない。戯贈の安否を確認した途端に、頭の血が目まぐるしい勢いで駆け巡っているのが分かる。
もうそろそろ容量を超えそうだ。
絶対に━━許せねぇ。
「霞ヶ窪、戯贈にそれ以上手を出してみろよ。その時はな━━」
「殺すって言いたいの? あはははははははは!」
霞ヶ窪は、盛大に笑った。腹を抱え、天を仰ぎながら盛大に。
だから、僕は言ってやる。この盛大に脆弱な思考の持ち主に分かりやすく、伝えてやる。
「ちげーよ。お前を━━弄んでやるよ」
※3へ続く
作品名:サイコシリアル [2] 作家名:たし