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冬野すいみ
冬野すいみ
novelistID. 21783
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太陽と影

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そして、私達は少し、大きくなった。
私には好きな人がいた。その人は月のような人だった。
普段は目立たずひそやかにそこにいて、それなのに何者にも屈しない、そんな月のような人だった。
私はその人に強く憧れていた。その人のひそやかな輝きを心に映すだけで幸せだった。

そして、月もまた太陽に憧れた。その人も太陽の彼女が好きだったのだ。



私は彼女を愛していた。

私の愛する太陽のような彼女と、月のようなあの人が惹かれあうのは当然に思えた。そして、私の考え通り、二人は惹かれあい、愛しみ触れ合うようになった。
なんだか私の中の宇宙が繋がったような不可思議な感覚だった。

二人はいつでも楽しそうに笑っていた。二人の世界が暖かくなったように感じられて私も幸せな気持ちになった。
けれど、同時に私のいる場所は冷たくさびしいように思えた。


また、その頃、私は悩み始めていた。私が彼女のそばにいるのはとても不釣り合いに思えたからだ。周りの人間もなぜ彼女のような魅力的な人間が、私などと友人でいるのか不思議に思っていたようだ。

私にも不思議だった。彼女は優しいから、きっと優しいから私から離れていかないのかもしれない。
そう思いながらも私は自己嫌悪と、不安感で押しつぶされそうになっていった。
彼女と「同じ」になりたい……、そう心は叫んだ。


そして、あの人と愛し合う彼女にも悲しみと憎しみを覚えていたのだ。
私の月を奪った彼女に。
私はその気持ちを必死に押し隠そうとした。消してしまおうと躍起になった。けれど、気持ちは消えるどころか染みのように広がって私の心を濁らせていく……。

あの人のことも憎かった。
私の太陽を奪ったあの人が。私は大切なものをすべて失った気がしていた。

私は次第に、自分を憎むようになっていた。自分が嫌いで嫌いで、要らないもののように思えて仕方なかった。
自分を棄ててしまえたらと願った。
私などは必要ないのだ。どうして必要がない?どうして必要がないと辛いの?

また、私の両親は私から遠かった。疎外されているわけでもないが、私にあまり関心がなかった。私の親は遠い宇宙の闇のような人間だった。ただそこに茫洋と漂いながら、すべてを飲み込む闇だった。

誰からも必要とされない自分。

私は自分が見えない空気にでもなったような気持ちだった。
太陽は去り、月は消え。宇宙は届かない闇だ。
どうしてひとりはつらいんだろう。どうしてひとりで生きていけないほど弱いんだろう。私が?人間が?
私は人間だった。太陽の影にもなれない、ちっぽけな人間だった。


けれど、すべては私の心の中で勝手に作り上げた、ひとりの苦しみだった。
作品名:太陽と影 作家名:冬野すいみ