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場所は校門
俺は先輩と放課後にカラオケに行く約束をこじつけて、今剣道部のエースとして頑張っているだろう先輩の帰りを待っている。

--あ。桜、咲き始めてる
「確か……先輩に会った日も……」



桜が咲き誇っている通学路。何人もの人に踏まれた、ぐちゃぐちゃになった桜の花びらの上を俺は走っていた。
『ちっくしょー……』
時刻は9時30分。
入学式はとっくの昔に始まっている。
『入学式の日に遅刻って……』

「しゃれになんねぇな」
「うぇっ!?」
現実と思い出がリンクしかけた時、先輩が部活を終えて学校から出てきた。
ヤバい。心臓バクバク。
「なにがっすか?」
そう問いかけた俺を横目でチラッと見たかと思えば、先輩は深い溜め息をつき、
「……なんでもねぇよ……じゃあ取りあえずカラオケ、行くか……」
と、言った。
「はい!」
先輩と並んで歩く。
先輩の方が、少し背が小さい。そして華奢だ。なんていうか・・・剣道のおかげか、体が締まってるんだよなぁ。
「折斗」
「ん?なんですか?」
先輩が怪訝な顔をしていると思えば、
「なにジロジロみてんだよ」
との事だった。
いやぁ先輩の体を見てたんですよ~~。なんて言えるはずもなく、当たり障りのない解等を口にした。
「ふぅん」
先輩もそれ以上に追及しなかった。

んん?なんか。空気、悪い、かも
なんだろう。この空気。


「折斗懐かしいな」
先輩は薄く笑った。
「なにがですか?」
俺は、わかっていたけどわからない振りをし、首をかしげた。
「ひっでぇのーおれ達の出会いだよ。で・あ・い!」
先輩は俺の顔を見ないで、桜をずっと見ている。
俺はずっと先輩をみているのにね。
「あんまり覚えてないです」
「嘘付け」
「嘘です」
入学式なのに遅刻して最悪だと思って悪態ついてたら、偶然にも自転車に乗った先輩が後ろからきて。
先輩は、
「自転車のせてやったんだよなぁ」
「まぁどっちにしろかなりの遅刻でしたけどねー」
「感謝しろ感謝」
「はいはい」
この人は、わかってないんだろうな。
俺の気持ち。
あんなに言葉で表してるのに、なんでわかってくれないんだろう。
先輩の黒くてちょっと固い髪も、長い指も、全部大好きなのに。
「お前は、俺の身長抜かしたしさぁ・・・あーぁ・・・」
その言葉に俺はピクッと体を反応させた。
「・・・だ?」
「ん?なんだよ」


「先輩の背ぇ抜かした俺は嫌いなんだ?」


先輩は今度こそちゃんと俺の目を見た。


「好きだよ。好きに決まってる」


桜の花びらが先輩の肩の上に乗っかった
「例え俺より20cm背がでかかったとしても、俺はお前の事好きだよ」
俺も
「俺もです」