陰陽戦記TAKERU 後編
その翌日も不思議な事件は起こった。
今度は横浜のビル街のガラスが一片に割れて大勢人々が怪我をしたらしい、原因はもちろん不明と来てやがる。
本当にこっちに向かって来てるみたいだ。
「アンタ何バカな顔して考えてんの?」
「うおっ、加奈葉?」
学校に登校して考え事してた俺の後ろにいつの間にか加奈葉がいやがった。
「アンタに考え事何て似合わないわよ。桐生さんじゃ無いんだから、少ない頭使う暇があるなら勉強でもしなさいよ。」
こいつは一々痛い所つついてきやがる、一言多いんだよなこいつ……
「それよりさ、美和さんとはどうなったの?」
「どうなったって何だよ?」
「キスくらいしたの?」
「ハァ? 何言ってんだお前は?」
キキキ…… キスってあれか? マウス・ツー・マウスの事か?
何て事言いやがるんだこいつは?
「キスって言ったらそれしかないでしょうに、それとも天然かまして魚とか言うんじゃないでしょうね? 古いわよ」
「そう言うお前はどうなんだよ?」
こいつは1月前から学と付き合うようになった。
「私達明日デートする事になったのよ、2人っきりのアバンチュールな一時を……」
「その辺にしとけよ加奈葉ちゃん」
「あ、学」
今度は学がやってきた。
今の話を聞いていたのだろう、赤くなっていた。
加奈葉の奴は余計な事までベラベラ喋るからなぁ……
「武、ちょっといいか?」
こいつ俺に用事か? 丁度良かった。俺も聞きたい事があるしな。
学の用事とは今起こっている事件の事だった。やっぱ話が早いぜ。
「今起こってる事件は明らかに人間ができる訳がない」
「じゃあやっぱり鬼絡みか? だけど暗黒天帝は滅んだ」
「その事なんだけど…… 実は奴が気になる事を言ってたんだ」
学が言う奴とは暗黒天帝の事だった。
こいつは以前暗黒天帝にそそのかされて悪事を働いてた事がある、その時に何か教えてもらったのか?
「気になる事?」
「ああ、感なんだけど…… 武、もし夜の海の中を一艘の船が航海してるとしよう……」
「何だそれ? 釣りでもしてるのか?」
「もしもの話さ、船はまっ暗な海を航海していても必ず港を見つけられる、何も無いのに港がどこにあるのか分かる、何故だと思う?」
「そりゃ灯台があるからだろ?」
「そうだ。仮設だけど暗黒天帝がいた時代に何か灯台のようなものがあれば奴は元の時代に戻る事ができる、時空の渦に飛び込むなんてそれこそ海図もコンパスも持たずに海に出るような物だからね」
確かに今思えばあのやり方は一か八かの賭けに近い、
漫画やアニメだと乗り物みたいな奴で詳しい年代や場所を選んで移動できるがアレはレーザーみたいな物で空に時空の穴を開ける物、いわば片道切符の1回勝負だ。下手すればそれ以前の石器時代や恐竜時代まで遡る可能性もある。
「まさかそれが出てきたってのか?」
「分からない、だけど否定も出来ないのは確かだ……」
学は忌々しそうな顔をする、すると教室から加奈葉が出てきた。
「学ーっ、話終わった?」
すると加奈葉は俺の前に立って学に向かってファッション雑誌を開いた。
「ねぇねぇ、こっちとこっちどっちがいいと思う?」
「おい加奈葉、今オレが話してんだろうが!」
「何よ、どうせ今起きてる事件がどうたらこうたらでしょ? 桐生さんに聞いたから気になったんじゃ無いの?」
「うっ……」
図星をつかれてオレは何も言えなくなる、こいつ感だけは良いからなぁ……
「暗黒天帝はもういなくなったんだし、心配無いじゃい」
「お前な……」
オレはため息を零した。
こいつ鬼の事件で散々怖い目にあった事をすっかり忘れやがる、プルプル震えて泣いてたクセに……
「さっきも言ったけど、私達明日の休みに遊園地に行く事になったのよ、それで着て行く服を選ぶのよ。ねぇ、学?」
加奈葉は学の腕をつかむと学は頬を赤くして顔を背ける。
こいつらすっかりバカップルだ。
「帰ったら麒麟達に聞いてみるかな……」
確か白虎も呼んで相談してみるとは言ってたが……
作品名:陰陽戦記TAKERU 後編 作家名:kazuyuki