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陰陽戦記TAKERU 後編

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 俺は自分が悔しかった。
 ただでさえこの前美和さんを守れなかったのに今回も怪我をさせてしまった。
 傷口を痛そうに押さえこみ額から脂汗を滲ませる美和さんの横に弓から分離した朱雀が現れる。
『いい加減にしなさいよ! アンタやる気あるの? 美和に怪我までさせて…… 本当に許さないわよ!』
「止めて朱雀、怪我をしたのは私の責任よ!」
『だけど!』
「いいから黙ってて!」
 美和さんの強張った顔に朱雀は何も言えなくなった。
 聖獣にも怯えってあるのか、人の事言えないけど……
「……美和さん、俺は……」
 俺は何言っていいか分からない、
 それどころかどうしていいか自分でも分からなかった。
 だが美和さんはそんな俺の頬に触れた。
「恐怖なら私だってありますよ」
「だけど、さっきは効かなかった」
 すると美和さんは苦笑した。
「私だって人間ですよ、怖い思いや不安な想いはあります、ですが私にとっての一番の恐怖は…… 愛する人達がいなくなる事です」
「あっ……」
 美和さんは彼氏がいたがその彼氏は暗黒天帝に殺された。
 その時の悲しみや絶望は今でも覚えていると言う。
「私が戦うのは、あの時と同じ思いをしたくないからです。武様達と出会えたこの世界を…… 私は失いたくないからです」
『そうだな武』
 すると麒麟が言って来た。
『恐怖は恥じる事じゃない、失う恐怖があるからこそ守りたいと言う勇気が生まれる、一番大事なのはその気持ちをどう受け止めるかなんじゃないのか?』
 確かに麒麟の言うとおりだった。
 俺は美和さんに何かあったらと思うと怖くて動けなかった。
 だからってそれで何もしなかったら臆病や腰抜け通り越してただの負け犬だ。
「そうだな、やっと吹っ切れたぜ」
 俺は鼻で笑って立ち上がる。
「くだらねぇ事思ってるなら一歩でも先に進んだ方が気持ち良いもんな」
『ああ、もう何も考えるな!』
「俺1人じゃ無理だって、なぁ美和さん」
「はい」
 すると美和さんも立ち上がった。
 俺が玄武の力を解放すると美和さんの怪我は回復した。
「朱雀、一緒に来てくれる?」
『……仕方ないわね、美和が言うなら』
 朱雀は微笑すると美和さんの弓と一体化して朱雀の弓となった。
「よし、なら行くぜ!」
 俺は麒麟の力を全て解放して麒麟の鎧を装着すると鬼斬り丸の柄を取り出す。
 空を見ると饕餮が落下してきた。
 距離はざっと200メートルって所か、
「いくぞ!」
「はいっ!」
 俺と美和さんは空に向けて全ての法力を解き放った。
 金と赤の光は1つになると螺旋を描いて饕餮に向かって飛んで行った。