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陰陽戦記TAKERU 後編

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 俺達は饕餮を探した。
 すると香穂ちゃんが饕餮を見つけた。
「あそこっ!」
 香穂ちゃんが指差した先には野郎の姿があった。
 一方饕餮は忌々しそうに舌打ちすると下に降り立った。
『本当に面倒な奴等だな、こんなところまで追ってくるとはな』
「だったら辞めろ、手間が省ける!」
「そうだよ、絶対許さないんだから!」
『フン、ガキ供が!』
 饕餮が目が輝く、
 その光を見た瞬間俺はさっきと同じ常態になった。
 だけど今回は俺だけじゃない、香穂ちゃんや拓朗もそうだった。
『拓朗、どうした?』
『香穂っ!』
『こいつは人の恐怖心を増幅させるんだ!』
 麒麟が説明する、
『フン、それを知ったところで何も出来まい、怯えて震えているだけの役立たずなどいても無駄なだけだ』
 饕餮はあざ笑う、するとその時、俺の後ろから一筋の赤い光が饕餮目掛けて飛んで行った。
『何っ?』
 饕餮は慌ててそれを回避、途端奴の術が解けて自由に動けるようになった。
 振り向くと後ろにいた美和さんが朱雀の弓を持っていた。
「生憎だけど、私にそんな物は通じないわ!」
『くっ、我が術に対抗出来る者がいるとは…… ムッ?』
 饕餮は美和さんの顔を不思議そうに見た。
『貴様、そうか…… あの女の子孫か』
「え、何の事?」
 美和さんも訳が分からず眉を細めた。
『まぁいい、うさばらしにはなるか!』
 すると饕餮の体から次第に形を変えて行った。
 大きさは俺と同じ位だが全身金属製の両足の脛の横に枚の羽が生え、
 巨大な3本の指の手、大きく競りあがった両肩の真中には饕餮の顔が現れた。
「その姿は……」
 俺はさっきの不発弾を思い出した。
 つまりこいつは不発弾と合体した事になる。
「何ですって?」
「不発弾と?」
「なんですか、それ?」
 美和さんは分からなかった。
 そう言えば彼女は平安時代の人間だっけ、戦後ではなく戦前の人間だ。すっかり忘れてた。
「何らかの理由で爆発せずに土の中に埋もれてた爆弾の事だよ。だけど……」
 俺は饕餮を見た。
「だから何だってんだ。そんなの爆発した所であんまり意味は無い、周囲が騒ぐだけだ!」
『フン、本当にそう思うか?』
「何だと?」
『貴様、どうやらニュースとやらを見ておらぬらしいな、どうりで知能の低そうな顔をしている訳だ』
「テ、テメェ……」
「武様落ち着いて!」
『挑発だ!』
 美和さんと麒麟は俺を宥める。
 白虎と言いこいつと言い、人を何だと思ってやがる?
 確かにニュースはあんまり見ないが…… 
 ってか四凶がニュースを見る? 冗談にしても笑えねぇな。
『爆発の規模自体はどうでも良いのだ。ここでは他の国の代表が集まり話し合う、そこにこいつをここで爆発させてやるのだ』
「なっ?」
 俺達はさすがに背筋が寒くなった。
『無論テレビとか言う物も来ているのだろう? そいつらも巻き込まれてしまうかもしれんが映像だけは残る、これが不発弾だと分かれば誰しも戦争の事を思い浮かべる、するとどうなるか……』
 そう言う事か、かつてこの日本に爆弾を落とした国の代表もここに来る、他の国の代表と供に巻き込んじまえばその国は世界中は叩かれる、それどころか日本の安全性も疑われ、しかも指導者がいなくなった事で彼方此方暴動が起こる、そして人々のいがみ合いや憎しみがエスカレートしてやがて戦火になる。
『我は窮奇や檮杌、ましてや渾沌とも違う、陰の気を集めるのに闇雲に破壊すれば良いと言う訳では無い、一部の人間を殺せば済む事だ』
「この野郎……」
『大体世界中で起こってる戦争など、上の人間がくだらない欲望で起こしてるようなものなのだからな。そんな連中が消える方がこの世の平和……』
「うるせぇっ!」
 俺は一歩前に出る。
「確かに戦争は人間が起こすモンだよ、だけどな、平和を壊して人々を争いに巻き込む権利なんて誰にもねぇ!」
『フン、それを行ってるのは人間だ。それはどうなる?』
「お前だってやろうとしてるだろ!」
「そうよ、アナタに言われたらお終いなんだから!」
 拓朗も香穂ちゃんも、さらに美和さんも俺の横に並んで聖獣の武器を構えた。
『……やはりこの場で始末しておかねばならないか!』
 饕餮が口を開けると衝撃波が放たれた。
「くっ!」
 オレ達4人はそれぞれ四散して攻撃を回避した。
「このっ!」
 美和さんが光の矢を放とうとする、
「やべっ、美和さんストップ!」
「えっ?」
『何で邪魔するのよ武?』
「バカ、お前だって爆弾がどう言うのかくらい知ってるだろ!」
 それを言われると朱雀は何もいえなくなった。
「ここで爆発させれば、それこそこいつの思う壺だ」
 そうなれば平和会議は中断されて騒ぎになる、
 それならまだいいが国同士が抱えている複雑な国際的な問題が解決せず山積みのままになる。
「別の場所で爆発させるしかないよな…… 麒麟、朱雀、あいつを別の場所まで移動できないか?」
 俺が尋ねると、2人(匹)は互いを見合わせた。
『そりゃできない事はないが……』
『奴がすんなりとやらせてくれる訳無いわ』
 だよな、相手は敵なんだし、どうか安全な所に移動させてくださいって聞いてくれる訳がない、
「お兄ちゃん!」
 すると香穂ちゃんと拓朗がやって来た。
「僕達が動きを止めます、その間に2人で奴を移動させてください!」
 拓朗と香穂ちゃんは互いの顔を見て頷くと立ち上がって饕餮に向かって突進した。
『小ざかしいっ!』
 饕餮の目が輝くがそれより早く香穂ちゃんが高速移動で助走をつけるとジャンプ、相手の顔に蹴りを入れた。
『グッ!』
 そして怯んだ隙を狙って拓朗と玄武が狙いをつけた。
「玄武!」
『任せろっ!』
 玄武の鎚を饕餮に向けると冷気が噴出して全身が凍りついた。
『ぐううっ?』
 饕餮は身動きが出来ない状態になった。
「美和さん、今だ!」
「はい!」
 俺は麒麟の宝玉を、美和さんは聖獣の武器をいったん解除して朱雀の宝玉をかざす、
『させるか!』
 饕餮は俺達に向かって眼力を放った。
「ぐっ……」
 俺は再び動けなくなった。
「武様っ!」
『死ねぇ―ッ!』
 饕餮の口が開くと巨大な衝撃波が放たれた。
「危ないっ!」
 美和さんは俺ごと押し倒して饕餮の衝撃波を回避した。
「ぐぅ……」
「美和さん!」
 俺は美和さんの肩を抑えるが俺の手に突然ヌルッとした感覚が走った。
 見ると俺の手が真っ赤な血で染まっていた。