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陰陽戦記TAKERU 後編

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第一話 新たなる戦い

 
 暗黒天帝を倒してから2ヶ月が過ぎた。
 俺は鬼と戦う事はなくなったが今別の敵と戦っていた。
「ええと……」
 自宅の部屋で俺こと藤岡武は片手にシャーペンを持って問題集と悪戦苦闘をしていた。
 正直鬼と戦うより辛かった。
「だああっ、クソッ、分からねぇっ!」
 俺の頭じゃ有名な大学や企業に入れないのは分かってる、かと言っていつまでもコンビニのバイトを続けて政経が成り立つ訳がない、
 もっと儲かる仕事に就かなければならなかった。何しろ俺には……
「武様。」
 ノックの音と供に扉が開く、
 するとそこへうなじ辺りで黒髪を2つに分けたツインテールの奇麗な女の子が現れた。
 彼女の名は美和さん、今年の春からこの家に住んでいる居候兼俺の目の精神剤である。
「お夜食です、どうぞ」
 美和さんのお手製の食事が盆に乗って差し出される。
「それじゃあ先に休みますね。おやすみなさい」
 美和さんは一礼してドアを閉める、やっぱいいなぁ、こう言うの……
「おっと、いけない。勉強勉強……」
 オレは再びシャーペンをノートに走らせた。
 夜が更ける中必死で勉強するオレは受験生の鏡だぜ。

 それから数日、オレは本屋に参考書を買いに来た。
「ん?」
 すると同じく参考書を探している学ラン姿の中学生を見かけた。そいつは……
「拓朗」
「えっ? あ、先輩」
 拓朗はオレに気付いて振り向く。
「勉強進んでるか?」
「いえ、あまり…… 先輩は?」
「俺もだ」 
 俺が苦笑すると拓朗も鼻で笑う。
「そう言えば玄武は元気ですか?」
「ああ、相変わらず時代劇ばっかり見てるけどな…… あ、あった!」
 オレは探してた参考書を見つけて手に取るとレジに向かった。
「じゃあな拓朗、今度遊びに来いよ!」
「はい、近い内に行きますよ」
 拓朗は頷いた。

 本屋を出て家に帰ろうとするとその時だ。
 目の前に1人の小学生くらいの女の子を発見した。困ったような顔をしてポリバケツの影や茂みの中を探している、
 その子を知っていたので声をかける。
「香穂ちゃん」
 オレの声に女の子は振り向く。
「お兄ちゃん」
 香穂ちゃんは足早にオレに近づいてくる、
 この子の名前は白石香穂ちゃん、美和さんがバイトしている風祭神社の神主の姪っ子さんである。
「どうした? また白虎がいないのか?」
「うん、もう2日も帰って無いの…… どこに行っちゃったのかなぁ?」
「心配しなくても大丈夫だろ、もう鬼だっていないし」
「そうだけど…… お兄ちゃん、白虎見つけたら呼んでね」
 香穂ちゃんはそれだけ言うと俺から離れた。
「ったく、何やってんだか」
『いやあ、全く』
「うおっ?」
 するとオレの足元にいつの間にか白い毛皮に黒い虎柄の猫が鎮座していた。
 実はこいつは猫じゃなくて本物(?)の虎だった。
『やぁ少年君、美和は元気かい?』
「って、お前一体何やって……」
 オレの声に周囲の人々が振り向く、周囲の人間にこいつは見えてない、つまりオレは危ない人間って事になる。
(お前来い、)
『オイオイ、僕は男とデートする趣味は無いんだよ?』
「いいからっ!」
 オレは人気の無い路地裏に連れ込む。
『人気の無い場所に連れ込んで何を考えてるんだい少年君? こう言うのは美和と……』
「お前殴るぞ」
 俺は握りこぶしを作る。
 こいつとは久しぶりに会ったけど相変わらずだな。
「香穂ちゃんの身にもなってやれよ、心配してんだぞ」
『ハッハッハ、香穂は心配性だからねぇ…… 大丈夫だよ、3日に1回は帰ってるから』
「そうじゃなくて、いつも一緒にいてやれって、朱雀みたいに……」
『オイオイ、僕に1人の女性を愛せってのか? 僕はたくさんの女の子と遊びたいんだよ』
 こいつが言う女の子とはメス猫の事だった。
 こいつはその辺の飼い猫や野良猫のメスをはべらかせてハーレムを作ってると言う、全くうらやま…… じゃない、不謹慎な。
『僕の場合は猫だってОKだよ、もちろん1番愛してるのは香穂だけどね』
「お前いつか刺されるぞ」
『ドラマの見すぎだよ少年君、相手は猫だぞ。人間じゃ有るまいし』
 こいつとは話が合わない、
 仕方ないから俺は相棒を出す事にした。
「頼むぞ麒麟」
『ああ…… おい白虎』
『あ、麒麟』
 すると上着のポケットの中から金色の光の球が飛び出して白虎の目の前で同じくらいの大きさのユニコーンと龍が合体したような生物が現れた。
 こいつはオレの相棒の麒麟だった。
『お前は心配してくれる家族を何だと思ってる? 少しは聖獣としての自覚をだな……』
『おいおい、玄武じゃ無いんだから、何時から説教くさくなったんだよ?』
『お前が軟派になったんだ。変な横文字は使うし……』
 そう言うお前も結構感化されてるぞ、
 この前オレと起動戦記ガソダムの再放送にはまってたくせに、
『……やれやれ、麒麟と口喧嘩して勝てる訳ない、分かったよ。これから帰るか、香穂怒るだろうなぁ』
 自業自得だな、
 オレ達に背を向けて歩き出した白虎は突然立ち止まって振り向いた。
『ああ、そうそう…… ここ最近西の方で空気がおかしいんだ。』
「どう言う意味だ?」
『さぁ、僕は何も知らないよ。近い内に分かるんじゃ無いの?』
 それだけ言うと白虎は4本の足の関節を曲げてジャンプ、一気に建物の屋根の上に上って去って行った。
「ったく、あいつ相変わらずいい加減だな……」
『武』
 麒麟はどこか深刻そうだった。
 こんなこいつは暗黒天帝の戦い以来だった。
『注意してい置いた方がいいかもしれない』
「はぁ? 別に気にするまでもないだろ?」
『いや、白虎は気まぐれだが嘘は言わない』
 そう言えばそうだな、調子良い奴だと思ったけど嘘だけは一度も言った事ない、
『俺も嫌な予感がする、何だこれは?』
「それより帰ろうぜ、用も済んだしな。」
 俺がそう言うと麒麟は金色の宝玉となり俺の手の中に戻った。
 それをポケットにしまうと俺は家に急いだ。