陰陽戦記TAKERU 後編
「あれは!」
俺は香穂ちゃんが竜巻を食い止めている姿が目に入った。
竜巻の中にはバイクの影が見える、こんな事が出来んのは窮奇しかいなかった。
「いけない、あのままじゃ!」
美和さんの背中に炎の翼が噴き出すと空に飛んだ。
そして左手の朱雀の弓から炎の矢を飛ばして竜巻を攻撃した。
『ぐっ?』
炎の矢に窮奇の風の鎧は相殺されて地面に倒れかける、しかし操られている男が片足で支えて転倒を防いだ。
「お、お兄ちゃん!」
俺が麒麟から降りて近づくと香穂ちゃんはその場に膝をついた。
それにしても何て格好だ?
「香穂ちゃん、その格好……」
「今部活の最中だったの、そうしたら白虎が四凶の気配がするって言うから」
それで学校から抜け出してきたって事か、その姿で町中歩いてたらかなり目立つだろうに……
『心配いらないよ、高速で移動してきたから香穂の姿は見えないし、それに部活の仲間達も今日は香穂は風邪で早退したって事にしたから、』
なら心配いらないな、でも問題はこいつだった。窮奇の攻撃を防いだ所でどうすれば良いのか分からなかった。
『ようやく追いつきましたか…… しかし何が変わると言うのですか?』
すると窮奇は鼻で笑った。
だけど俺は負けじと言い放った。
「はっ、テメェは何も分かってねぇな、俺達が力を合わせればどうって事は無いんだよ!」
『はたしてそうでしょうか?』
窮奇は香穂ちゃんの方を見る、
俺も香穂ちゃんの顔色が優れないのを知っていた。
あんまり長くは戦えないか……
そう考えていると窮奇は攻撃を仕掛けて来た。
『カァアアーーッ!』
窮奇は前輪を持ち上げて再び竜巻と化すと俺達に突っ込んで来た。
「ちっ!」
俺は香穂ちゃんを抱えて回避する、
しかし奴は近付いてくる、
逃げてるだけじゃ勝てる訳がない、何とかこいつを倒す手は無いかと考える……
「……ん、そうか!」
俺は美和さんとの会話を思い出した。『どんな敵にも弱点はある』、まさにその通りだった。
「香穂ちゃん、白虎、後どれくらい頑張れる?」
『香穂の法力は残り少ない、後一発が限界だ』
香穂ちゃんの代わりに白虎が喋る、
「それだけできりゃ十分だ。美和さん!」
俺は空を飛んでいる美和さんを見る、
すると美和さんは作戦を理解したようで頭を下げた。
「行くぜ!」
俺は白虎の力を開放すると一気に奴との距離を離して香穂ちゃんを離した。
そして麒麟の力を開放して麒麟の鎧を装着して鬼切り丸を召喚し、光の刃を作りだした。
「美和さん、今だ!」
「はい!」
美和さんは強力な炎の矢を放ってさっきと同く窮奇の竜巻を吹き飛ばした。
俺はその隙を狙って白虎の力を開放、俺は敵に突っ込んで大ジャンプ、操られている男のヘルメットに鬼切り丸を振り下ろした。
『何っ!』
俺の全体重をかけた金と白の刃が男の脳天に炸裂、途端ヘルメットに亀裂が生じると鬼が憑依していたヘルメットが真っ二つに割れた。
ヘルメットは黒い煙を吹きながら消滅、途端ハンドルを握っていた男の手が緩んだのを確認すると俺は窮奇から引き離した。
「今だっ!」
俺が叫ぶと美和さんは香穂ちゃんの横に並んで降りたって弓を引く、
香穂ちゃんも残る全ての法力を込めた杖を大きく振りかざした。
「悪鬼滅砕っ!」
「たああっ!」
美和さんの炎の矢と香穂ちゃんの竜巻と合体して炎の竜巻となった。
『し、しまった!』
窮奇は自分の弱点に気付いた。
それはオートバイは運転手がいなければ動けない事だった。
『グアアアアーーーッ!』
窮奇は美和さん達の合体攻撃を受けて轟音を轟かせながら爆発した。
「やった!」
俺は喜ぶ、しかし……
「うっ……」
香穂ちゃんはその場に倒れてしまった。
手から離れた白虎の杖が元の猫サイズの白虎に戻った。
『大丈夫か、香穂?』
「う、うん……」
「無理するなって」
香穂ちゃんは美和さんに抱き起こされる、
俺は操られた人の腕を肩に回して運んでくる。かなり衰弱が激しい、
病院に連絡した方がいいな。
『くっ…… ぬかりましたか、』
炎上するオートバイの黒い煙の影から元の姿の窮奇が姿を現した。
媒介となったオートバイが破壊されたので分離したのだろう、
『まぁ、いいでしょう。陰の気は大体集まりました。媒介についても少し考える必要があるみたいですね。』
目の前で燃えさかるオートバイを見下すと忌々しそうに舌打ちをする、
すると窮奇は背中の翼を羽ばたかせると宙に浮かんだ。
『今回は素直に負けを認めましょう、ですが次に会った時は覚悟しておいてください。』
それだけ言うと窮奇は俺達に背を向けて飛んで行った。
俺達はその姿が見えなくなるまでその場に立ち尽くしていた。
作品名:陰陽戦記TAKERU 後編 作家名:kazuyuki