小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

陰陽戦記TAKERU 後編

INDEX|114ページ/115ページ|

次のページ前のページ
 

「……な?」
 俺は息を飲む、そんな訳が無かった。
 だけどあまりにもそっくりだった。
 頭から爪先まで見下ろすが、間違いない、美和さんがそこにいた。
 着ている服も青いワンピースの上から白く袖の長いブラウスを羽織り、髪型はうなじ辺りで縛ったツインテールだった。
「始めまして、日野酉美和子です」
 日野酉『美和』子…… 明らかに偶然とは思えなかった。
 彼女は俺の1つ年下の17才、名前は知らないが京都にある女子高の3年生で弓道部の部長を務め、モデルとしても活躍していると言う、何とまぁ才色兼備な……
 すると美和子さんは礼儀ただしく両手で一通のかなり古い文を俺に手渡した。
「これを武様に……」
 俺は手紙を受け取った。

 俺は美和子さんと供にキャンパスに向った。
 もう授業は始まってるけど、俺は学長から特別に出なくても良いと言われた。
 美和子さんに頼まれたとかで…… どうやら彼女はかなり権力を持ってるらしい、
 俺は美和子さんの隣りのベンチに座りながら手紙を読んだ。
 その手紙の主は何と美和さん本人からからだった。
『武様へ、これを読んでいると言う事はもう私自身はこの世にはいないでしょう、
 私が時限を越えてたどり着いた世界は、私が元いた平安京の一年後の世界でした。
 帰って来た私はこの世界で再び陰陽師として鬼や妖から人々を守り、ある陰陽師の元に嫁ぎました。
 そしてしばらく経ったある日、菅原道真公の体を媒介に復活した魔獣達が暴れていました。
 しかし私では武様のように全ての聖獣と融合できず、止む無く聖獣達の借りて四凶達を借りて人柱になる事で封印する事にしました。
 力を失った宝玉を帝より受けたまわり家宝とし、この手紙と供に後世に伝えます。何時の日か必ず私の子孫が貴方の元へ行くはずです、
 私もどんな姿や形であろうともう一度武様に会いに行きます。私達が輪廻の輪を越え再び出会えたように……
 その時はよろしくお願いします。          美和より。』

 俺の頭の中で全ての辻褄が噛み合った。
 饕餮が言っていたかつて自分達魔獣を封印した美和さんの祖先、それは過去の世界に向った美和さん本人だった。
 その美和さんが四凶を封印し、その封印がこの時代で解かれたって言う事か……
 そして暗黒天帝が過去に戻る事ができるのも全ては四凶がいたからだ。
 俺は美和子さんの膝の上に置いてある木箱を見る、中には言っているのは間違いなく聖獣の宝玉だった。
 だけど言い方は悪くなるけど麒麟達もこの世にいないって事になる、
 以前人間だった麒麟達は宝玉に封印した自然の力を自分達の魂と融合させ聖獣になった。それを美和さんの魂と融合させて四凶を封印した。
 そして俺にとって一番重要なのは今ここにいる美和子さんはあの美和さんの子孫になる、

 だけど分からない事が1つあった。
 それはこの『輪廻の輪を越え』と言う部分、人は生まれ変われば様々な生き物になるって聞いた事がある、もしくは美和さんは今の時代に犬か猫…… もしくは別の人間に生まれ変わってるって事になる、誰かは分からないけど……
 しかもこの『私と武様が再び会えた』と言うフレーズ、もし輪廻とやらを信じるなら俺は前世で美和さんと会えた事になる、
 それは俺の前世は平安時代の人間で、美和さんの近くに居た人間なのかもしれない、もしかしたら帝か嫁いだ先の陰陽師、だとしたら美和子さんは俺の子孫と言う事(もう完全に赤の他人だけど)になる、もしくは道真に殺された元恋人…… いや、考えすぎか……
「武様……」
「え? あ、はい……」
 美和子さんは木箱をベンチに置くと立ち上がると深々と頭を下げた。
「私は先祖の遺言に従い、武様の元に参じました」
「あ、その……」
 俺は何て言って良いか分からなかった。
 まさかこんな事になるなんて思わなかったからだ。俺が困っていると……
「お会いできてとても光栄です、私は幼い頃より武様の事をお聞きしてお慕いしておりました」
「お、お慕いって……」
「武様は私の想像していた通りの方です、ぜひ私と交際してください」
 いきなり電撃告白だった。
 これなんてギャルゲーだ? フラグも立てないのにヒロインから告白かよ? それとも何かの陰謀か?
「ちょ、ちょっと待ってください!」
 俺は1人喋りまくる美和子さんを止めた。
 そりゃ身に余る光栄だ。美和子さんは美和さんそっくりで奇麗で可愛いし、大富豪って言うぐらいだからすげぇ金持ちだろう、
 だけど彼女は美和子さんであり、あの美和さんじゃ無い、いくら美和さんの子孫だからって従う必要なんて無い、
 俺がそれを言うと美和子さんは微笑しながら答えた。
「正直言いますと、私も武様と会うのは少し不安でした。ですが武様を一目見たら…… 何やら懐かしい感覚がしたんです」
「懐かしい?」
「上手く言えませんが…… 久々に出会えたと言いますか、始めてお会いした気がしないと言いますか…… 貴方でないといけない気がして」
「あっ……」
 俺は始めて美和さんと出会った時の事を思い出した。
 確かに俺も美和さんと始めて出会ったにも拘らずとても懐かしい感じがした。
 今回も同じだ。美和さんに面影があるだけで美和さんじゃ無い、しかし現実に俺や彼女は……
「でも、家の事とかあるんじゃないんですか? 美和子さんって大富豪ですし、俺はただの民間人ですよ」
「平気です、それは先祖代々納得してますし、それに私の上には兄が居りますので、私が武様の元に嫁いでも心配は要りません」
 凄い事をさらりと言って来た。
 先祖代々って…… どんだけ続いてんだ? って言うか妹だったのかこの人、
 俺がどんな顔をしていたのか分からないが、美和子さんは顔を顰めて肩を窄めた。
「……ご、ごめんなさい、迷惑ですよね、私は先祖とは違いますから」
「えっ? そんな事は……」
「私は…… 武様のお気持ちも知らずに……」
 美和子さんは少し泣きそうだった。
 マズイ、回りにSPがいるかも知れない、今夜黒服の男達に狙われたら大変だ。
「お、俺の方こそすみません、ただいきなり沢山の事があり過ぎて…… 頭の中が混乱してただけなんです、俺…… 凄く頭悪いですから」
「そんな事ありません、武様は素敵な方です!」
 美和子さん、そこまで力説してくれるのか? 始めて会ったのに? 過大評価かもしれないのに?
 美和子さんは俺の手を摑むとまるで祈るように見上げた。
「貴方は世界を救ったんです、自信を持ってください」
 美和子さんの手の温もりが伝わってくる、
 彼女はここまで俺の事を思ってくれている、正直美和さんの子孫とか生まれ変わりとかそんな事はどうでも良い、俺の心は満たされた。
「あの」
 俺はもう片方の手を美和子さんの手の上に乗せた。
「理由はどうあれ初対面なんで…… その、友達から初めてもらえますか?」
「はい…… 喜んで」
 美和子さんは顔を明るくして頷いた。
 お誂え向きに授業終了のチャイムが鳴り響いた。丁度良い、
「美和子さん、早速で悪いんですけど…… 一緒に来てくれませんか? 会わせたい人達がいるんです」
「はい!」
 とりあえず学と加奈葉を紹介しよう、