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繋がったものは9

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帰り道に、コンビニでお菓子を買った。俺の旦那は甘いもんが、割と好きなので、たまに土産を買う。とはいうても、コンビニに売ってるのは安いお菓子だから、大した出費ではない。

 三色団子と、一番高いビールを二本。もう、晩飯はできてるやろうから、デザートと食前酒にした。だらだらと川原の土手を歩いていると、月が昇っている。満月ではないが、三日月っちゅーには、ちょっと小太りな月だ。もうすぐ、師走に突入して、今年一年も終わる。取り立てて、大きな事件もなく一年が終わりそうで、ほっとする。来月は、何かと忙しいので、こんなゆっくりしたことはしてられへんやろうけど、まあ、それもいつものことだ。

 徒歩十分を歩ききって、家に帰った。扉を開けると暖かい空気だ。居間に顔を出したら台所で、何やらごそごそしている旦那がいた。足音で振り向いて、にかっと笑っている。

「おかえり。」

「ただいま。これ。」

「お? これ、おまえ、花見団子やんけ。」

「ビールだけっちゅーのもなんやから、おまけに買っただけや。」

「さよか。先、風呂入るか? 」

「いや、メシ食わせて。」

 ほな、着替えてこい、と、言われて寝室に入る。こっちに普段着兼パジャマのスウェットの上下が置いてある。それに手早く着替えて、居間に戻ったら、すでに食事の準備はできていた。今日は、サバの味噌煮と小松菜の煮浸しと味噌汁という陣容だった。そこに、俺が買ってきたビールが載っている。

「なんかあったか? 」

「興信所の件が片付いたから、その祝い。」

「え? 」

「俺の弟が、探してたんやと。」

 堀内から聞いたことを話すと、旦那は複雑な顔をした。まだ、ぴんぴんしている両親が死んだ後のことを用意しているなんていうのは、ちょっとイヤなもんだ。

「会わへんのか? 」

「会わへんほうがええと思うで。たぶん、胸糞悪い話やろうからな。」

「けど、水都。ほんまに、なんかあったらな・・・・」

「ほんまにあっても、後でしかわからへんやろ? それに、俺は鬼子やから、葬式に顔なんか出したら、恨まれるだけや。」

「そういうんならええけどな。」

「花月、俺は葬式なんか誰のでも出やへん。堀内のおっさんが死んでも、愛人やと言われてるから出られへんし、沢野のおっさんも一緒や。」

「確かに・・・・愛人はあかんよなあ。」

「おまえは、俺のだけは出てくれ。というか、燃やすのだけ、どうにかしてくれたら、それでええからな。灰も、そこで捨ててきてええし、後は何もせんでええ。」

 本音からすると、こういうことになる。社交辞令として、仕事関係で出なければならないものはあるだろうが、それ以外で、俺が葬式に参列することはない。誰が死のうと俺には別れを言う相手はない。

「せやなあ、俺が死んでも無縁仏やし、それでええよな。」

 男同士の夫夫だと、後を継ぐ人間なんて発生しないのだから、そういうことになる。同じ海で、とか、同じ場所に、なんて夢みたいなことも考えない。死んだら、人間は灰になって終わりだ。

 特上のビールを飲みながらする話でもないが、まあ言うとかんと、気にするので、先に告げた。これで重苦しい話は終わりや。サバの味噌煮をつつきながら、残りのビールを飲んで、明日の予定なんてものに変わる。

「明日、朝からレンタ借りて、カニしばきに行く。」

「はいはい。」

「予定は一泊。」

「え? 今頃、飛び込みなんかいけるか? オンシーズンやぞ? 」

「もちろん予約しとります。一泊二万ぽっきり。」

「高いなあー。」

「どあほ、これでも安いほうじゃっっ。ほんで、翌日、蕎麦食って帰るっちゅーことで、どないでっしゃろ? 」

「そうめんやないんか? 」

「毎度、そうめんやと、イヤやろ? 」

 このコースだと、大概、〆にそうめんというコースだが、今回は違うらしい。蕎麦なんてあったかなあーと考えるのだが、あまり、そこいらの地方に詳しくないので、全部お任せだ。

「足立やんな? 」

 いつも、このコースは立ち寄る美術館がある。そこにある『蓬莱図』という絵が、俺の旦那の大のお気に入りなのだ。

「ちゃう。あっこまで遠征せぇーへん。今回は、イルカちゃんと戯れる。」

「はい? おいおい、おっさん。イルカちゃんって・・・・おまえ・・・」

「おっさんって言うな。イルカだけやないで? なんと、ペンギンちゃんもおる。」

「・・・・・・おい・・・・・」

「まあ、たまにはええがな。童心に戻って一日、イルカちゃんとペンギンちゃんと遊ぼやないか。」

「このクソ寒いのに、外でイルカと遊ぶってか? 」

「おう、ショーはしゃーないやろ。」

 何が悲しゅうて、三十路越えたおっさん二人で、そんなお子様なことをせなあかんねんと、悲しくなったが、旦那は楽しそうだ。

「それ、もしかして・・・壁にイルカちゃんとペンギンちゃんがいてるラブホとか? 」

「・・・・・おまえ・・・その発想のほうがおっさんやぞ? 」

「おまえのが伝染したんとちゃうか? 」

 意味のないツッコミ大会をしつつ、食事する。ビールを飲み干すと、摘みにしていたおかずを食べて、お茶漬けでさらっと流し込む。それから、デザートの団子を、旦那は食べる。俺は、ほうじ茶で相手をする。三本百円という安いお菓子だが、美味そうに食う。

「もう十二月か・・・・一年って早いよなあ。」

「ほんまになあ。」

「今年は、御節を買うか? 」

「いや、ええわ。俺、食われへんもんばっかりやし。だいたい、三が日なんかマトモな食事でけへんし。」

「せやんなあ。でも、数の子と栗きんとんだけは用意するで?」

「それは頼むわ。」

 俺の仕事は、大晦日一杯まであるので、年末の用事は、ほとんど旦那にお任せになる。そして、年明けから三日までは、本気でだらだら生活なので、日にちも確認できない状態だから、わざわざご大層な料理も準備しない。というか、ほぼ全裸状態で暮らすことになっているので、食事もおざなりなのだ。どっかのあほ旦那が、こういう時は盛りまくるからだ。



 後片付けをして、順番に風呂に入ると、もう真夜中の時間だ。今日は大人しく寝ると、旦那が宣言して、自分の寝室に引き取った。

・・・どあほがっっ。そうは問屋がおろさへんっちゅーのよっっ・・・・・

 居間のチェストから、何かしらのブツを取り出して、旦那の寝室に乱入する。旦那は、俺が仕掛けると、すぐに盛り上がってくれるので、非常に楽にいたせる相手だ。

「・・・・花月・・・・したい・・・・」

「はいはい。」

「なあ、したいねんけど」

「・・・おまえ・・・・明日は早いねんぞ? 」

 ぶつぶつと文句を言っている旦那の内腿辺りを下から撫で上げて、べろりと耳あたりを舐める。それから首筋を何度か甘噛みすると、旦那の体温が上がってくる。冷たい俺の足で、旦那の足を擦ると、俺の身体を下敷きにした。

「なに、してんの? 」

「煽ってるに決まってるやろ? 」

 今日は金曜日。明日は休日。多少の乱暴は許される日だ。風呂場で、綺麗にしてきたので、生でもいけるようにしてやった。

「可愛くねだったら、やったるわ。」
作品名:繋がったものは9 作家名:篠義