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さらばしちはちくがつのなきがら

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夏だった




もしかしたらおれ、
こいをするのが、
にがてかもしれない。

告白を受けたのはいつかの夏だった。
いつかがいつだったのかはうまく思い出せなくて、でもそれが夏だったことを俺はきちんと知っている。

告白といってもそれはなんだか甘くてやわこい、かわいらしいようなものではなくて、
それでも痛いような、うしろめたいような顔をしてそっと呟いたこどもの、張りつめた目元のうつくしさに
身も蓋もない気持ちを抱いてしまった俺にしてみれば、それは確かにそういう意味での告白でもあったのかもしれない。

「あ、なんか思い出してる顔だ」
「うん」
「何」
「いやべつに」
「なにそれ、」

ふふ、と首筋に風がふく。
背中になついてきた重みを享受する。
黙った俺をからかって、あそんでくれよとせがむいぬやねこのように、脇腹の横から顔を出すのだ。
否応なくいとおしくなってらんぼうに髪をなぜる俺の指は相も変わらず拙いのに、前髪のあいだから見上げてくる瞳は、ずいぶん大人になっていた。

「まあわかるけどね、なんとなく」
「ん?」
「あんときのこと思い出してんでしょう」
「あんときって、」
「いつだっけね、あれ」
「……夏」
「そうだっけ」
「夏やった、絶対」

それが夏だったことを。
俺はきちんと知っている。

慰めるだなんて滅相もないことで、ただただそうしたくて唇を押し当てたうなじの
そうしてしまってからなんだか後悔して、うつむいた先の、少し下のほう。

君が着ていたのは真っ白なシャツで、
それが俺にひどく汗をかかせたのだ。