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繋がったものは4

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24時間営業の健康ランドは、空いていた。夫夫が同性で便利やな、と、思うのは、こういう時だ。別々に分かれると、出る時間が合わなくて、どっちかが待ったりしなくてはならない。それに、ふたりで入りたいとなると、貸切り風呂か家風呂なんてことになって、広いとこでのんびりするのもできない。その点、うちは、同性なので、同じとこへ浸かって、うぷーとリラックスできるし、いろいろと会話もできる。

「あーやっぱり、大きい風呂は気持ちええなあ。冷え切っとったから、ようぬくもるわ。」

「よう我慢したほうちゃうか? 三時間ぐらい寝転んでたからな。」

「大火球はなかったけど、結構見られたしな。」

 夜明け前の、こんな時間だと、さすがに24時間営業でも人は少ない。大きな風呂に、ふたりが貸切で浸かっている。

「ほんで? 」

「仮眠したら、もうちょっと足延ばして海でもシバいて、焼肉っていう予定や。」

「ええんちゃうか? 夕方には帰りたいんやが、どや? 」

「ほな、昼飯が焼肉やな。」

 ここから、小一時間ほど高速を走ると、海岸線に出る。海岸線沿いに、有名な牛の産地があって、そこに美味くて安いホルモン屋がある。ステーキやすき焼きは高すぎて、シャレにならないが、ホルモンなら、そこそこの値段で食べられる。

「昼飯にビール飲んでもええで? 花月。海までやったら運転したるわ。」

「おう、頼むわ。」

 さほど飲まないが、焼肉なんかだと、やっぱりビールなんてことになる。ここまでお膳立てしてくれた旦那には、それぐらいのサービスはしとかんとあかんやろう。海岸線の景色のええとこで休憩して帰るつもりやから、そこまでの運転をして、のんびり休めばいい。

「仮眠て、ここ、泊まりいけるんか? 」

「あほ、なんで、あんなクルマ借りてきたと思てんね? あれ、座席フラットにしたら寝られるからや。」

「なるほどな。」

「湯冷めせんように、しっかりぬくもっとけよ。風邪なんかひかしたないんやからな。」

「ほな、ひくようなことはせんでくれ。わし、この時期に、外はあかんで? 」

「そういうつもりやったら、ラブホを使う。」

「さいでっか。あ、明日、本屋寄ってくれ。」

「おう。」

 浸かっているのは、ジャグジーなので、外からは中は見えない。だが、そろそろと延ばされてくる手は、気配でわかるから、さっさと立ち上がって、別の風呂に逃げた。なんぼなんでも、こんなとこで気分盛り上げられたら、たまったもんやない。

「ええ勘しとる。」

 そして、阻止されると解っていて、やっている俺の旦那も大概やとは思う。

「どこでも盛るな。」

「いややわー軽い愛情表現やのに。」

「やっぱり、さっき座布団と一緒に燃したったらよかった。」

「はははは・・・そんなんしたら、困るんは、おまえや。」

 笑顔で、さらりと痛いところを突かれた。困るのは、確かに俺のほうや。こいつがおらんくなったら、たちどころに俺は生活が停滞する。いや、そういうんもおかしいか。こいつがおらんくなったら、気持ちは動かないが、傍目には幸せな生活というのは送れるのかもしれない。

・・・・それ、幸せっていうのとは、かなり違うんやろうけどなあ・・・・・

「・・・せやな・・・」

「はいはい、そこで本気にしない。心配せんでも、喪主は俺や。安心して三途の川渡らしたるからな。」

「頼むわ。」

「とりあえず、どっか浸かろう。やっぱ、まだ寒い。」

 かなり身体は温まっていたが、芯からではなかったのか、すぐに寒くなってくる。ある程度、室内温度は高いはずなのだが、それぐらいでは温まらない。すぐに、サウナに飛び込んで全身温めることにした。ビールのための我慢大会なんてことをしていたら、結構な時間、居座ってしまった。

 ほかほかに茹で上がって、湯上りビールを楽しんだら、すっかり夜が明けていた。そこの駐車場で、とりあえず仮眠をとって、動き出したのはすでに午後だった。

「どうする? これから行ったら、夕方戻るのは無理や。」

「レンタ何度までや? 」

「一応、九時まで。」

「ほな、とりあえず肉しばこうか? 」

 夕方には無理だが、レンタの返却時間には余裕で間に合うから、それでもええと俺は言うた。あまり遅くなると、旦那が疲れるだろうと思っただけなので、時間なんて、どうでもいいのだ。そういうことなら、そうしまひょ、と、旦那も東へ進路を向ける。週末は、そんな感じで終わった。





 やっぱりか、と、連絡を受けて堀内も頷いた。相手は、そうだろうと思っていたから驚かないが、まさか、ほんまとは思わなかった。

「居場所というか連絡先はわかっとりますが、あんたらの仕事を楽にする義理はありませんわな? ・・・はあ? 謝礼? ほおう、なんぼでっか? ・・・・ハハハハハ・・・・シャレかいな? 」

 水都の家のほうからの捜索だと、興信所の調査員は口を割った。なんでも、遺産のことで相談があるらしいなんて、もっともなことを言っているが、真実かどうかは謎だ。十数年も放置しといて、今更、どうこう言うことではないだろう。電話を切ってから、馴染みの知り合いのところへ電話を入れた。

「わしや、堀内や。すまんが、ちょっと調べたってくれんか? 」

 堀内には、そういう知り合いが多い。元々、仕事柄、相手の素性は調べて取引するぐらいの慎重さがないと、この商売は長くは続かないからだ。従業員も、最低限の調べはする。だから、水都のことも、ある程度は把握していた。今となっては、その資料は古過ぎて使えない。遺産ということは、誰かが死んだことを意味している。そこいらのことは調べてからでないと、接触なんてさせられない。沢野に甘いと言われても、保護者役をやっていたのだから、それぐらいは心配する。

「わしの愛人のみっちゃんや。あいつの家族について調べて欲しいんやが?  ああ? あれとちゃう。あれやのおて、肉親のほうや。・・・・・とりあえず、死人の有無と財産状態。おう、なるべくでええから。」

 相手も慣れているから、はいはいと二つ返事で了承した。表の興信所なんてものは、制限がありすぎて、なかなかだが、裏でやっている人間は、そういう意味ではコネも調査能力も段違いだ。なんせ、警察の情報どころか市町村のデータすら閲覧可能だからだ。金はかかるが、それも成功報酬だから、成功しない限りは、微々たるものしか手に入らない。そういうところだから、調べも早いし、確実だ。

・・・・はあ、やれやれ。やっぱり、使うことになるんかいな。・・・・・

 大したことでなかったら使わないで、東川あたりに任せようと思っていたが、そうもいってられない。金が動くような事態なら、裏でどうにかすることのほうが多い。東川が、そこそこ裏のことはやれても、堀内ほどではない。それに、東川が使う裏の人間は、堀内の知り合いだから、結局、こちらにお鉢はまわってくる。

 「堀内の愛人」 という有難くない関係にしてあるのも、それで護れることが多いからだ。堀内のことを知っているもしくはウワサは知っている人間なら、水都にちょっかいはかけない。かけたが最後、確実に報復されることも知っている。
作品名:繋がったものは4 作家名:篠義