女傑撃剣を魅せる
「コーン、カラカラカラ、、、」と門松のような切り口を見せ、竹が板間を転げ回った。その様を眺めながら、工藤師範は脇構えになり、半身になって腰を落とし、一礼した。息を止めていた道場内は、また、一拍おいて、拍手と喚声を何度も何度もおくった。お礼のアナウンスが流れていたのだが、飲み込まれて聞こえない。見届けて控え室へ戻った。控え室で、胴着を着替えているところへ。
「〇〇先生」と、声をかけながら、工藤トシ子師範が入って来た。
「あっ、工藤先生、お見事でした、薙刀の試斬は、久しぶりに観させてもらいました」
「いえいえ、年甲斐も無く、熱くなりましたの」74歳とは、とても思えない。
「巻き藁試斬や先生方の竹兵法試斬を拝見していましたらね、やってみたくなりましたのよ」
「そうでしたか!、お若いですね~、何年ぶりですか~?」工藤師範の薙刀演武は幾度か見ている。
「そうですね、かれこれ、20年ぶりぐらいでしょうか、うっふっふ」笑顔も若い。斬った竹を記念に、一輪挿しにすると言う。剛胆にして、繊細である。「参りましたわ~」の言葉を飲み込んで。
「本日はお招き、誠に有り難うございました」深く頭を下げた。