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~Rose Garden~

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まいったな・・

もうそれしか言えない。
体調を崩して,かれこれ一か月。
回復するどころか,悪化の一方。
何回病院に行ったことか。医療費もバカにならない。

昨日は夜になっても咳が止まらずに,夜間診療へ行った。
そしたら,点滴なんぞ打たれてしまった。
その時は咳も,喉の不快感もおさまったけど,
朝,起きたらまた喉がイガイガ。
体もだるい。
いつ発作がおきてもおかしくない感じ。
仕事にいかなきゃ,とは思ったけど,行った方が迷惑かけるかもしれない。
でも,体は動かそうと思えば動かせる。

どうする,どうする・・・

そんなことを考えている間に,体が動かないうちにあっという間に時間は過ぎていき,結局休みの連絡を入れた。
罪悪感。
これで,発作を起こして仕事に丸々穴をあけたのは2回目。
早退を含めると・・・何回だ。数えるのも嫌だ。

でも,この休みを有効に使わなければ,意味がない。
はぁ・・・
こんなに頻繁に病院に行くっていうのもどうか。
あきれられそうだな。
そう思いながら,かかりつけの病院に予約の電話を入れた。

予約が取れたのは昼の12時。
それまでに,少しでも体を休めようと横になった。
ようやくうとうとしたと思ったら,すごい咳で目が覚める。
立て続けにおこる咳。
自分の意思とは無関係にヒュっと息が吸い込まれては,咳き込む。
口の端から唾液なんだか痰なんだか,わからない液体が零れ落ちる。
あわてて,ティッシュに吐き出しては,新しいティッシュを引っ張り出し,またあふれ出る液体を抑える。
すごいことになってんなぁ・・・
なんて,どこか客観的に自分を見れるほど,頭の中は冷静だった。
息が苦しくはない。
呼吸はできてる。

大丈夫,大丈夫だ。
死ぬことはない。

そうは思いながらも,一向に咳は止まらない。
でも,抗う術もない。
5分とも10分ともわからない間,そんな状態でうずくまっていて,ようやく落ち着いてきた。

でも,これで,自分が仕事を休んで,病院に予約を取った正当性が得られたような気がする。
もし,仕事場でこんな状態になり,こんな醜態をさらしてしまったら・・
心配されるやら気を使われるやら,居心地が悪いことこの上なさそうだ。

ふぅ と,どこか少し安心して時計を見ると,予約の時間が迫っていることに気が付く。

ダルい身体を引きずって,簡単に身なりを整え,家を出た。



病院につき,昨日夜間診療で診てくれた先生が書いてくれた手紙を,受付に出す。
最近の夜間診療はちゃんとそういうことしてくれるのか,と,昨日は少し感動した。
今までの夜間診療なんて,いい思いをしたことがなかったからだ。
今回は,たまたま内科の先生が当直だったり,喘息発作というわかりやすい症例だったり,かかりつけ医がはっきりしていたことで,こんなに手厚い待遇となったのかもしれない。
ぼんやりと待合室のソファに座りながら,簡単に色々調べられる。
昨日から何回も計らされている体温は36.7度。
平熱は35度前半だから,ちょっと高いと言えなくもない。
でも,高すぎるわけでもない。
脳内の酸素飽和度は98%。
脳に酸素は行ってる。問題ない。

ダルいなぁ・・
いつもは長いと感じる待ち時間も,ぼうっとしている間に終わった。

今日の診察,というか検査は長かった。
今の薬でも咳の発作が起こるのは,「難治性」と言えなくもないらしい。
もしかして,他の原因があるのでは,と,血液,尿,レントゲン・・と検査フルコースだった。

結果はいたってシンプル,深刻な病気はない。
ただ,肺が人よりも小さいこと,心臓が肥大していることなどを指摘された。
心臓肥大は,ギリギリ問題がない範囲。
胸の幅に比べて,心臓が48%。50%を超えると問題らしい。
肺が小さいのは,そのせいですぐに息切れを起こしているのではないかと問われた。
なるほど,確かに思い当たるフシがある。
小学校の時の担任に,
「すぐに息切れしている,体力がない」
と指摘されたことを思い出した。
その時は,本当に体力がないものだと思っていた。
大人になってからだって,息切れはしていたが,身体が重いせいだと思っていた。
今年に入って10キロ落としたけど,息切れは相変わらずで,皆そんなもんだろうと思っていた・・・が違ったのか。
しかも,自分は気道も狭いらしい。
狭い気道,小さい肺,そのせいで取り込む酸素が少なく,全身に血液を送り出そうとして肥大している心臓・・・なるほどねぇ。
全てが重なり合って,今の自分の状態がある。
・・・なんだ。俺って,案外丈夫じゃなかったんだな。
こんなになって,今さら気が付くのもどうかとは思うが,思ったより俺は,普通よりの体ではなさそうだ。

しかし,命に関わるとか入院どうこうという話ではないらしい。
ジャンプ系の運動は禁止されたが(理由がイマイチわからなかったけど),運動も別にいいとか。
仕事は,うまくセーブしてやっていくしかないと。
座りっぱなしの仕事なら問題ないんだが・・・ある意味というか本当に肉体労働だからなぁ。
「動けません」「声出せません」じゃ使い物にならないような気がするんだが。
まぁそこは・・うまくやってみるしかないのか。

仕事は,楽しい。
メチャクチャ楽しい。
だから,知らず知らず,無意識のうちに身体が勝手に動く。
気が付いたら,子どもらと一緒に走り回って転げまわって,大声で笑いながら遊んでる。
気が付いたら,大声あげて歓声をあげたり,子どもを応援したりしている。
無理矢理じゃない,勝手に。思うがまま。
セーブなんて・・したことがない。
咳がひどいなんてわかってたけど・・・セーブできなかった。
毎日,毎日がそんなだから,治るものも治らなかったのか。
だから,放課後,咳が止まらない毎日だったのか。


・・そうか。

俺は案外丈夫じゃなかった。

なんだか,急に,自覚した。


作品名:~Rose Garden~ 作家名:碧風 -aoka-