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笑顔の反発 【Fantastic Fantasia】

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「申し訳ありませんでした」
「別に良いって。気にしねぇから」
 海辺の旅館の部屋でレンは浴衣姿で籐椅子に足を組んで座り、目の前で土下座している史間に溜息を付く。寧ろ吹き掛ける。
 史間が落ち着いた頃、龍は店まで引き返すのが面倒な距離を進んだ後であり海の上であった。レンは取り敢えず陸地に引き返すよう龍に言い、温泉旅館に部屋を取った。泣き腫らした目で史間が押し黙っていたのでレンは一人で大浴場に行き温泉に浸かった。露天風呂からの海と星も見事である。部屋に戻っても史間は出て行った時と同じ恰好のままであり、痺れを切らしたレンが声を掛けた所で土下座される。
「すみません」
「良いよ」
「申し訳ありません」
「申し開きしなくて良いから」
「ごめんなさい」
「うんうん」
「すみません」
「……」
 史間は何を言われようと耳に入らない、否、脳に届かない様で謝り続ける。
「だからさぁ、後悔するなら行動すんなって俺言ったじゃねぇか」
 うりうり、とレンは足で史間の頭を突く。あんまりである。
「申し訳ありません」
「謝罪の言葉いらねぇンだよ。お前後悔してないんだろ?」
「ごめんなさい」
「おい、後悔してんだったら俺怒るぞ。ちゃんと答えろ」
「……悔いてはいません」
「じゃあ謝らなくて良いんだよ」
 レンは足を引っこめて手でくしゃりと史間の髪を混ぜる。
「しかし、」
 史間はむず痒そうな表情を浮かべて言い淀む。
「俺が良いっつってんだから良いんだよ。殺されようと後悔しないなら何も言わねぇさ」
「それは」
 史間の顔がさっと蒼褪める。それを見てレンは軽く吹き出すと椅子を下り、史間の頭を胸に抱えて背中をぽんぽんと叩いた。
「今日のお前は百面相だな。いなくなったりしねぇよ。お前が後悔するなら死なねぇ」
 どれだけそう言おうと死ぬときゃ死ぬのが人間であるがレンは人間ですらない。レンがそう言うのなら死なないのであろう。
 それに、とレンは史間の顔を自分に向けさせる。
「シアだって俺をがっかりはさせないんだろう?」
「勿論です」
「じゃ、御相子で」
 レンはにやりと笑う。全く性の無い人ですね、と史間は苦笑してレンを見上げると手を取って口付けた。
「貴方の御心のままに」
「俺、そんなに凄い奴じゃないんだけど」
 レンが全く物怖じせずに言うと史間はくすりと笑って眼だけで応えた。
―― 僕にとっては掛け替えの無い方ですよ