deputy
相変わらず不機嫌そうに美紗を見ている。
「私、この手紙をくれる人を好きになったんです」
しっかりと杉田を見据えて言う美紗に、杉田は口を開いた。
「書いたのは俺だが、気持ちは浜岡のものだ」
「でも書いたのは杉田先輩です。だから、お礼が言いたかったんです。初めて手紙を頂いてからの7か月、毎日楽しかった。だから、手紙を書いてくださっていた先輩にお礼が言いたかったんです!」
力を込めて言ったが、杉田はくるりと踵を返して歩き出した。
美紗は慌てる。
「先輩、待ってください!」
「俺は手紙を書くのが苦手なんだ、それに……」
お前を好きになったのは、あいつより俺の方が先だった。
ぼそりとそう言い捨てると、杉田はさっさといなくなった。
一人取り残された美紗は、瞬きも忘れて杉田が消えた道を凝視していた。
そして次に、弾かれたように杉田の後を追いかけた。
了